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【イベントレポート】時代遅れの人事評価を刷新する ~Rethink,Redesign,Reboot~ 出版記念イベント

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▲ ヒューマンバリュー社・半蔵門の新オフィス。

2018年8月22日、新オフィスへ移転したてのヒューマンバリュー社にて、「時代遅れの人事評価を刷新する」の出版記念イベントが開催されました。今回はこちらのイベントレポートをお送りしたいと思います!

「時代遅れの人事評価を刷新する」とは?

米国・シアトルを拠点に置くコンサルティング企業、ピープルファーム社(People Firm)のCEO・共同創設者であるタムラ・チャンドラー氏の著書。

▲時代遅れの人事評価制度を刷新する~そのパフォーマンス・マネジメントは価値を生み出していますか?~ タムラ・チャンドラー (著), 阿諏訪博一 (監修), 株式会社ヒューマンバリュー (翻訳)

「そのパフォーマンス・マネジメントは価値を生み出していますか?」という投げかけの下、改めてパフォーマンス・マネジメントを”Rethink”(再考)し、”Redesign"(再設計)し、”Reboot”(再起動)することで、働く人や組織の独自性に合わせた本質的かつ、実践的なパフォーマンス・マネジメントが可能になることを提唱しています。

著者が提唱するこの「PM Reboot」(パフォーマンス・マネジメントの再起動)の仕組みは、イノベーティブかつカスタマイズ可能であることから、地に足の着いた実践的な手法とされ、国際的にも高い評価を受けています。

また、著者は米国『コンサルティング・マガジン(Consulting Magazine)』においてトップコンサルタントに二度も選ばれるなど、業界をけん引しているリーダーの一人。そんな彼女の著書を監訳・翻訳し、出版したのが、今回お邪魔した株式会社ヒューマンバリュー(以下HV社)です。

出版イベントの概要

出版記念イベントには、さまざまな企業の人事・経営層、約60人が参加していました。そんな中イベントは、
① オープニング
② 書籍の紹介
③ パネルダイアログ
④ カフェダイアログ   の4部構成で進んでいきました。

オープニング

著者であるチャンドラー氏からの動画メッセージと、HV社・副社長で今回の監訳を務められた阿諏訪さんから出版の背景のお話をいただきました。

動画メッセージでチャンドラー氏は、「パフォーマンス・マネジメントは人間性を取り戻す」といった、パフォーマンス・マネジメントの根底に関わる想いを語っていました。また、「ちょっぴりおかしい」という表現を使って、既存のパフォーマンス・マネジメントシステムがどれだけ非有効かについて語られる場面もありました。

▲チャンドラー氏(右から2人目)とHV社のみなさん。シアトルのピープルファーム社オフィスにて。

HV社のみなさんは翻訳にあたり、シアトルにあるチャンドラー氏のオフィスも訪れたそうで、チャンドラー氏の印象を“自然体で温かい方”と評していました。また、チャンドラー氏からは、書籍の中で重要なメッセージとなっている「We are not machine」(私たちは機械ではない)のイラストが描かれたTシャツを頂いたそうで、パフォーマンス・マネジメント革新という取組みを通じて、人と人との交流が生まれる様子も垣間見ることができました。

それではここから、実際に出版イベント内で話された内容を元にレポートしていきたいと思います!

出版の背景(HV社副社長・阿諏訪さん)

▲ HV社・副社長で、本書籍の監訳を務められた阿諏訪さん 

出版に込めた想い

近年、「ノーレイティング」(※1)や「ノーカーブ」(※2)など、パフォーマンス・マネジメントに関わる制度変更の波が広がってきています。しかし、日本企業で起きがちな失敗例として、制度を入れることが目的になってしまい、その論点が、手続きや仕組みに偏りがちです。そのため、本質的・抜本的な変化につながりにくい現状があります。そのような現状に対してこの書籍の出版がパフォーマンス・マネジメントの「本来の目的」やそれによって「実現したい姿」を再考し、本質的な変革を進めることに寄与できるのではないか、という想いがあります。

(※1)A、B、Cなどの社員のランク付け(レイティング)による相対評価による人事評価制度を廃止すること。
(※2)決められた分布の中に収めるよう設計された相対評価をやめること。

米国と日本のパフォーマンス・マネジメントの位置付け

同じパフォーマンス・マネジメントでも、米国と日本ではその位置付けや意味づけが異なっています。

米国の人事制度は、これまで仕事を基準とした「職務」と「成果」の軸でした。一方、日本の人事制度は人を基準とした「職能」と生活基準の「年齢」、さらに仕事基準の「職務」とゆるやかな「成果」を合わせた人事制度でした。

このように、同じパフォーマンス・マネジメントを目指す中でも出発点が違うため、その後の運用や定着の方法は異なってきます。たとえば日本では、大企業の場合、昇格・昇進から遅れることへの恐れや不安がパフォーマンス・マネジメントに強く影響することも考えられます。

今後の日本のPMI(パフォーマンスマネジメント革新)のあゆみのイメージ

新たな人事評価制度の探求が始まり(働き方改革との連動も)グロースマインドセットをはぐくむ実践が少しずつ広がっていくと思います。そこから徐々にパフォーマンス・マネジメントの見直しに動き出す企業が徐々に表れてくるのではないかと推察しています。

書籍の紹介

ここから、実際に書籍の翻訳を務められた方から直接、本の内容や翻訳に携わった中で感じたことをお話いただきました。

※書籍の具体的な内容やサマリについては、別途連載している書籍紹介記事をご覧ください!
https://hito-link.jp/media/column/pm/hvpm1

Rethink(再考する)のパートの翻訳を務められた霜山さんより

 

▲ HV社・霜山さん

Rethink(再考する)のパートは、「人・組織と社会の哲学」のシフトに関することや、旧来のマネジメントシステムにはどういう弊害があったのか、などを明らかにするパートです。また、過去の取組みにはどんな問題点があるのか、今後、自組織のパフォーマンス・マネジメントを考える上で共通になるフレーム・基盤となる考え方を紹介しているのがRethink(再考する)のパートです。

今後、パフォーマンス・マネジメント変革には様々な取組みがある中で、その優先順位をどうつけていくかを考える際に活用できるフレームワークが紹介されています。0ベースで考えることも大切ですが、まずはこういったフレームワークを上手く活用することで、より効果的に独自の改革を進めていけるのではないかと思います。

また、この書籍に関わる中では特に、第三章の「8つの根本的なシフト」の内容が、パフォーマンス・マネジメントだけでなく今起きている様々な事象に応用できる考え方ではないかと感じました。この章だけを読んでも、経営者やマネジメント層に参考になる考え方ではないかと思います。今、社会でどんな変化が起きているか、自分たちのビジネスを取り巻く環境がどうなっているのか、を理解するうえで非常に役に立つのではないかと思います。

Redesign(再設計する)のパートの翻訳を務められた三宅さん、川口さんより

▲ HV社・三宅さん 

Redesign(再設計する)のパートは、パフォーマンス・マネジメントの「体制を作る」「枠組みを描く」「内容を検討する」というテーマで、肝のパートになります。他の書籍はどちらかというと方法論が主ですが、本書籍については作っていくプロセスについても細かく記載されている点が特徴的です。これは、いい制度を作ればよいことではなく、どういう手順で、どういう人を巻き込んで、どういう思考プロセスで創っていくのか、どういう意識合わせをしていくのが、実際にReboot(再起動)していくのに大変重要なプロセスになると思います。 

▲ HV社・川口さん
 

設計の基本方針に基づいて、どんな施策に取り組んでいくのか、いろいろなアイデアを出していきますが、その中で、6つのフレームワークに基づいて考えるアプローチ方法を紹介しています。誰が、いつ、どういうタイミングで行っていくのか、どういうオーナーシップを持って行っていくのか、について書かれたパートです。

人事評価制度というととても幅広いものですが、本書籍では、インサイトをどう得ていくのか、関係性をどう結び付けていくか、ディベロップメントにどう繋がるかどうか、の視点に関する話が多く盛り込まれています。基本方針と整合性が取れているのか、何を目指していくのか、目的をぶらさないよう、丁寧に意識合わせ・検証していくプロセスが分かりやすく描かれていたのが印象的でした。

また、コンサルタントであるチャンドラー氏のような戦略系に強い方があえて“人間性”に機会を見出していくことをテーマにしているところにも、大変共感しました。

Redesign(再設計する)のパートの翻訳を務められた長曽さんより

▲ HV社・長曽さん

Redesign(再設計する)のパートは、パフォーマンス・マネジメント変革の中でもここからが勝負、というパートです。チェンジ・マネジメントをどのように行っていくか、それまでに検討してきた人事評価制度をどう実装していくか、「実行プランを練る」「運用する」という流れで書かれています。

パフォーマンス・マネジメントは単体で行ってもなかなか上手く行きづらいことが往々にしてあります。そのため影響を与えているタレントマネジメント等と一緒に行っていく必要があり、キャリアに向けた研修や異動などとしっかり、連動させていく必要があります

また、ITシステムとパフォーマン・マネジメントとのプロセスを連動させていく必要もあります。さらに、新たなパフォーマンス・マネジメントへの賛同の集め方、導入の仕方、仕組みを持続させるための運用などを踏まえた変革プランの進め方についても書かれているため、人事評価制度に関わらず、これからの変革の在り方について有益なパートになっています。

最後に、パフォーマンス・マネジメント変革を企画してきた人事・経営側と、それを受け入れる従業員では、これまで通ってきた思考プロセスなどが違うケースがほとんどです。そのため従業員側の気持ちや配慮に基づいて、定着を図っていくことが必要です。ロジックの部分と気持ちの部分を踏まえた推進をしていくこと、また相手が人間であるということを前提として、進めていくことが大事だと感じています。

パネルダイアログ

「日本における人事制度改革の価値や可能性とは・・」というテーマについてみなさんの意見が交わされました。

霜山さん

これまで、皆が感じていた違和感に対して、変えに行くという動き自体に価値があると感じます。これは単体の企業において、ということではなく、社会全体にとって良いことなのではないかと感じています。実際に海外のカンファレンスなどに参加すると、参加者のみなさんから、「社会にとって価値のあることを実践している」という心持ちが伝わってきて、大変エネルギッシュに感じており、日本でもそういったことが広がるといいと思っています。また、パフォーマンス・マネジメントの概念について総論は賛成だが、各論は?といった疑問に答え、主体的に変えていく入口がここにあるのではと思っています。

三宅さん

矛盾のない人事評価を作ることは難しいと思います。その中では、納得解を高めていくことが大事なのではないかと思います。同一の価値観を創っていくために、出し合っていくこと、共有することが大切なのではないかと感じています。

川口さん

人事とは何か?あり方を問い直す時期に来ていると感じます。ありたい姿と現実の矛盾に苦しんでいる人事の方によくお会いしてきましたが、そういった中で、HRの可能性を解放していく活動なのではないかと思っています。

長曽さん

血流をよくする・気の流れをよくする、ということだと思っています。逆にいうと何が阻害要因になっていたかを明らかにする時期なのではないかと思います。人間が持っている本来の力を開放することができると思いますが、とはいえ対話だけでは変わらないとも思っており、Hot(人間性・対話)とCool(構造・成果)の両面で統合的に行う必要があると思います。

阿諏訪さん

課題に感じているのは、人事の方はどうしても「いい制度をつくろう」ということにフォーカスしすぎてしまう傾向があると思います。ちゃんと評価する、ということも大切ですが、「可能性」を拡大していくという意識の転換をどう行っていくのか、が大切だと感じます。それが人事制度だけでなくあらゆることを変革していく可能性を秘めているのではないかと思います。

感想共有

ここで、参加者が3~4人でこれまでの感想を共有しました。私たちのチームではこんな感想が交わされました。

■人事制度において、HotとCoolの両面が必要、という長曽さんの話に共感した。今はどちらかというとHot(人間的・対話)の打ち出しが多いものの、これまでは、Cool(構造・成果)に傾きすぎていたので、それをゆり戻して今後バランスしていく、その過渡期にあるのではないかと感じる。

■これまで「これでいいんだろうか」と迷いの中にいる人たちが、そこから抜けるきっかけになるのではないか。パフォーマンス・マネジメントの総論は賛成だが、では、具体的にどうやるのか?に応える書籍になっている点で、大変価値があると思う。まだまだ事例が少ない中で、「大手企業だからできるんでしょ」「うちの会社は特殊だからできない」といった半ばあきらめが入ってしまう現状を打破できるのではないか。という可能性を感じた。

参加者からの質疑応答

質問1

実行プランと運用について質問させてください。日頃、現場で直面していて、かつ他社人事でもよく出てくる話題で、パフォーマンス・マネジメントとタレントマネジメント、そしてITシステムをどう整合性をとっていくか、またそれぞれがお互いのことをどう理解して、共有して進めていくか、が大きな課題です。特に、人事システムはかなり融通がきかないものが多く、システムに自分たちが合わせなければいけないのが現状。そのため、ここで言われている独自のパフォーマンス・マネジメントは可能なのか。

<回答>
昨今のITシステムのトレンドは、グローバル企業ではあまりカスタマイズしないのがトレンドです。確かに、その中では基本テンプレートに基づいて、運用していくしかない。ただ、実現したいことは上手くマージさせていく必要があり、完全に諦めなくてよいと思っています。

正直、とても難しい問題ではあるものの、運用の部分でいくらでも対応できる部分があると思っています。やりたいこととちゃんとマージさせていくことが大切だと思います。

質問2

報酬の分配の納得性・公平性は、日本企業の中でどのように受け入れられているのか、どういうロジックであれば理解を得ていきやすいのか?

成果主義は評価を下す上で分かりやすいが、パフォーマンス・マネジメントの流れは人の成長にフォーカスするため、分かりにくいと感じる。そういったことは、日本企業ではどういう受け入れられ方をしているのか?どうやって理解を得られていくのか?

<回答>
いろいろなパターンがあるが、報酬の不公平感は変わらないかもしれない。ただ、米企業であれば、成果主義がベースにあるため、脳科学的に成長を阻害しない形で進めていく流れだと思う。その中で成長を阻害しない形でパフォーマンス・マネジメントを進めるというスタンスが多いと感じる。

一方で、いわゆる旧来型の日本企業では少し様子が異なっており、報酬の公平性に対する反応はあまりない。それよりも昇格に対する公平性に対する反応の方が、敏感な傾向があると感じる。

質問3

ノーレイティングとパフォーマンス・マネジメントに矛盾があるのではないか?

<回答>
どんな制度でも矛盾はあると思っていて、パフォーマンス・マネジメント変革に関しても寄与できるのは、納得度を高めることだと思っている。あいまいなものに対して、マネジャー同士ですり合わせたり、1on1ですり合わせたり、シェアードビジョンとマネジャーの個人の力で複雑さに対応していく必要がある。

ランクに対しての評価はないが、報酬の金額に対する評価はなくならない。そのため、ランク付けによって大きな恐れや弊害がある企業にとっては、ノーレイティングが効果的に働く。ただし、そういった弊害がない企業にとっては、ノーレイティングに変更することの効果は薄い。

どうやって納得してもらうのか?を突き詰めていくと、「その組織が成し遂げたいことは何なのか?どうやったら高められるのか?」について、1on1や日常的に共有できているかが、大切になってくる。

カフェ・ダイアログとイベントまとめ

イベントの最後は、参加者とHV社のみなさんで軽食をつまみながら、今回の出版や今日の感想、日頃の課題など、各々が自由に語り合う場となりました。

私たちも、サンドウィッチをいただきながら(とても美味しかったです!)、今日の感想や、あらためてパフォーマンス・マネジメントに対する皆様の熱量などに関して話していました。

今回の出版イベントに参加して、人事・経営の方のパフォーマンス・マネジメントに対する関心の高さや熱量、そして実際にもう取組みが始まっていることを実感しました。

また、これからパフォーマンス・マネジメントの考え方、つまり人間のあるべき姿や能力をいかに開放していくか、ということにテーマが置かれ、その流れが加速していくことは間違いないと感じました。しかし、それらを「どうやって」成し遂げていくかについては、より具体的な事例や情報が今まで以上に求められるのではないかと感じました。

執筆:大島 亜衣里

時代遅れの人事評価制度を刷新する時代遅れの人事評価制度を刷新する
~そのパフォーマンス・マネジメントは価値を生み出していますか?~

単行本(ソフトカバー) – 2018/7/18
タムラ・チャンドラー (著), 阿諏訪博一 (監修),
株式会社ヒューマンバリュー (翻訳) https://www.amazon.co.jp/gp/product/4990689380/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4990689380&linkCode=as2&tag=humanvalue-22&linkId=0bb30d9029e76b574fd10c4b0e31a905

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