「チームワークが大切」という概念は教育現場ではもちろん、会社組織の中でも重要視されています。なぜ、働く上でチームワークが大切なのでしょうか。今回はチームワークが重要視される背景と、チームワークの質を高めるポイントについて解説します。
チームワークとは
チームワークとは社員同士が助け合い、お互いの弱点を補完することで、個人では達成できない仕事を、組織として成し遂げるときに発生する力のことをいいます。
しかし、チームではなく個人がそれぞれの力をフルに発揮することで、業務効果を上げることができるという考えもあります。チームとよく似た言葉に「グループ」がありますが、この2つの言葉の違いを使って、チームワークの定義を説明したいと思います。
組織行動学における「チーム」と「グループ」の違い
「チーム」も「グループ」も、どちらも複数の人が物事に取り組むという意味がありますが、組織行動学における定義では別の意味であることが分かります。
●グループとは?
組織行動学において、グループとはある目的のために集まった人々、つまり単なる集団を指します。グループにおいて重要視されるのは各自で能力を最大限に発揮することです。よって一人ひとりの成果を単純合計したものを成果として扱います。グループのメンバ―が5名いて、それぞれが20の力を秘めているとしましょう。この場合、グループ単位の力の合計値は100となります。
●チームとは?
組織行動学におけるチームとは、集団であるだけでなく、所属している一人ひとりが持つスキルや経験だけでは解決できないことが達成可能となる組織です。グループでは個人の成果を高めることに重きを置きますが、チームの場合は、メンバーの全員が共同体となり、一貫した方向性のもとに活動を行うことで、より大きな効果や成果を生み出すことができるとしています。
先ほどと同様に、5名のメンバーが20ずつの力を持っているとしましょう。チームでは、個々の力に加え、協力し合うことで生まれる力が発生します。例えばそれが30だとすれば、チーム全体で130の力を発揮できると定義できるのです。
チームワークとは
複数のメンバーが集まり、「同じ方向を向く」ことでプラスアルファの力が発揮される集団(チーム)から生み出される力や連携のことを指します。
チームワークが重要視される背景
誰しもが学生時代などに、チームワークの重要性について学ぶ機会があったことでしょう。「協調性」や「他者の承認」など、どちらかというと道徳的な観点で語られることが多かったのではないでしょうか。しかしビジネスシーンに限っていえば、チームワークが重要視される背景には、以下の4つの要素があるとされています。
日本経済の長期低迷
日本の一部の企業では自発的にチームを結成することで、品質の向上を達成してきました。しかし、この活動はあくまでチーム結成者の自主性に任せられているため、成果の安定性を保ちにくいという欠点があります。この現状を変えるためには、企業内の全社員を巻き込み、より大きなチームとして価値を生み出す必要があるとされています。
ビジネスサイクルの短縮化
ビジネスサイクルが短期化していることで、既存ビジネスの延長線ではなく、新しいものを変化に合わせて提供することが求められています。新たなものを生み出すには、アイデアの発掘や磨き込みをはじめ、既存ビジネスよりもパワーが必要になります。
ビジネスシーンのグローバル化
現代社会では取引先や人材の多国籍化が進んでおり、企業経営に大きな影響を与えています。社会の変化に対応すべく、国外進出を考え、現地で安定した企業活動を続けようとすれば、必然的に現地の専門家の協力が欠かせなくなります。
また、人材の多国籍化に対応するには個々の生活習慣や考え方などを正しく把握し、理解を示す必要もあるでしょう。これらに対応し、多様な知識やスキルの集まったチームを結成できれば、会社に大きな成果をもたらしてくれると期待されています。
チームワークが向上することで得られる効果
人はそれぞれ、得意分野と苦手分野を持ち合わせています。チームが正しく機能していないと、苦手分野を一人の力で対応しなければなりませんので時間と労力を消費し、パフォーマンス力が衰えてしまいます。一方で、チームが正しく機能していると、互いの苦手分野をそれぞれで補うことができるため、得意分野の能力を最大限に発揮できます。
チームが正しく機能し、チームワークが向上すると、「業務効率化」「モチベーションの向上」「メンバー同士の学習意欲が刺激される」「情報共有が促進される」「選択肢が多様化する」「変化対応力が向上する」「イノベーションが生まれる」など様々な効果があります。
チームワークを発揮させるための工夫
チームワークを向上させるためには、以下のような工夫が効果的です。
(1)十分なサポート体制を用意する
チームとして新しいことに挑戦するには、資金や時間が必要です。場合によっては、既存のメンバーでは対応できない部分に、専門的なスキルを持つ人材を追加する必要が生じることもあるでしょう。非常事態に陥った場合に、このような援助について迅速に対応できる体制を整えておくことが大切です。
(2)適度な相互依存関係を作る
メンバーが自分以外のメンバーの能力に期待し、必要とすることにより、これまでに達成できなかった課題解決の糸口を見つけられるようになります。メンバー間で適度に依存できる関係性は、円滑なコミュニケーションとも大きな関わりがあるとされています。
(3)チーム外メンバーと明確な境界を作る
チーム外メンバーとの境界が曖昧だと、活動し始めた際に、どの範囲まで情報を共有すればよいのか、意見に耳を傾けるべきなのかが分からなくなってしまいます。曖昧な線引きは混乱を招くため、純度の高いチーム活動を行うためには、より明瞭な境界線が必要です。ただし、チームがより大きな組織内に置かれた際に、孤立しないよう配慮することが必要です。
(4)相互刺激による学習型組織を構築する
メンバーが互いに刺激を与えながら進んで学習することで、これまでの既成概念にとらわれない手段や考え方を生み出し続けられる組織を、学習型組織といいます。チームを学習型組織にすることで、個々に芽生えた自主性や主体性をチーム内でも活用でき、よりよいチームワークの発揮が期待できます。
(5)多様性を尊重する
今後は、多様な考えや生き方を受け入れ、自由な発想で仕事に向き合える組織作りが求められる時代です。年齢や性別、国籍はもちろん、経験年数や上下関係などにとらわれない環境が構築されれば、チーム活動の効果はより大きくなるでしょう。
まとめ
チームワークとは社員同士が助け合い、お互いの弱点を補完することで、個人では達成できない仕事を、組織として成し遂げるときに発生する力のことをいいます。メンバー全員が共同体となり、一貫した方向性のもとに活動を行うことでチームとして適切に活動することができます。チームワークの向上にはいくつかのポイントがあるため、社員の意識改革をしていくなど、工夫しながらとり組むとよいでしょう。