コーチングでは、対話を通してその人自身のなかにある気持ちや潜在的な能力に気づかせ、目標を達成するための支援を行います。コーチングのメリットやティーチングとの違い、コーチングに関連する3つの資格などをご紹介していきます。
コーチングについての基礎知識を解説
コーチングというのは、相手への問いかけを通して、その人自身が成長していく過程を支援する人材開発の一つです。
教師と生徒のように教えることによって成長を促すのではなく、あくまでその人自身が持つ考えや視点に気づかせることで、自発的な成長を導いていくことが特徴です。対象者の自己実現や、目標の達成を促すために有効な方法だと言われています。
コーチングのメリットは以下のようなことが挙げられます。
能動的な行動や内発的動機が育まれる
コーチングの主体は、コーチングを受ける人自身です。
あくまでコーチングを行う側は、その人がやりたいこと、考えていることを引き出す支援を行う存在です。何かを指示したり教えたりすることは基本的にありません。
そのため、人材開発や教育という言葉は上から指示されるイメージがありますが、コーチングは受ける人の能動的な行動や内発的動機を引き出す手法のため、誰かにやらされているのではなく「自分が主体である」というマインドになることが期待できます。
自ら考え行動していく力が得られる
コーチングを行うことにより、常に「自分自身が何を考えているのか」を問われることになります。
「自分のやりたいことは何なのか」「どのように成長していきたいと考えているのか」など、普段の生活では忘れがちな本質的な問いをたくさん受けることになります。
これによって、自分が進みたい方向が明確になり、自ら行動へ移していく力が得られるようになります。また、行動への一歩を踏み出す不安も解消されやすくなります。
自分自身で選択することによって高いモチベーションが保たれる
人は指示されたことではなく、自らで選択したことに対して高いモチベーションを発揮します。
コーチングを通して自らで考え決断し、行動することができるようになり、非常に高いモチベーションを持って物事に取り組んでいくことができるようになります。
物事を多様な視点から捉えた思考ができるようになる
コーチングでは何かを指示したり教えたりすることはなく、気づきを与えるという視点が大切にされます。一人で考えているとどうしても視野が狭くなり、今置かれた状況や周りの価値観に縛られてしまいがちです。
コーチングによって、自分では気づかなかったものの見方を発見することができ、物事を多面的にとらえる力が養われていきます。
コーチングとティーチングの違いについて
これまで人材開発といえばティーチングが一般的でした。ティーチングというのは「教える」ことです。
知識や経験の豊富な人材が教えることを通して知識の習得を図り、成長を促します。
ティーチングは学習プロセスが明確で速く大勢の人に提供できる反面、やり取りが一方通行になりやすく自主性や自分で考える力が育ちにくいというデメリットがあります。このようなことから、コーチングとティーチングは適切に使い分けを行うことが大切になります。
そこでここからはそれぞれの手法で有効なケースを具体的にご紹介していきます。
コーチングが有効なケース
まず、コーチングが有効なケースを以下に挙げていきます。
- 対象者にある程度の能力がある
コーチングを行う対象者に、一定以上の能力やスキルが備わっているとコーチングの効果は高まります。
例えば全く営業の経験や知識がない人に対して、売り上げ拡大に向けてどのような取り組みをすればよいのかと問いかけても、その人から考えを引き出すことは難しいといえます。
しかし、ある程度の経験を持った人であれば課題や対応策を考える土台があるため、能動的に引き出していく方法は有効的です。
- 緊急性は低いが重要度が高い内容を考える
コーチングは、これからのキャリアをどのように築いていきたいのか、どのようなチームマネジメントを行いたいのかなど、今後の大きな展望について考えていくときに実施すると効果的です。
重要なことである反面、緊急性が低いので普段は後回しにされてしまいがちですが優先度は高い内容です。
このようなじっくりと時間をかけて深く思慮する必要がある場合にはコーチング役に立つでしょう。
ティーチングが有効なケース
次に、ティーチングが効果的なケースを以下に挙げます。
- 対象者のスキルや能力がまだ乏しい
具体的なスキルや知識を伝えたい場合は、ティーチングが効果的です。
新卒や業務未経験などキャリアの初期段階では、ティーチングによって教えることで基礎的な力を身につけてもらうという選択肢も有効だと言えます。
- 緊急性の高いタスクを担当している
コーチングは気づきを与えながら考えを引き出していく手法のため、一般的には時間が長くかかります。
そのため、緊急性の高い障害対応やクレーム対応などを担当している人に対して時間をかけてコーチングをするのは避けるべきです。
緊急度が高いタスクについては、どのように対処すればいいのかなど具体的な方法を教えることで、心理的な負荷も少なくすぐにタスクへ取り組むことができます。
コーチングをより深く学べる3つのコーチング資格
人材開発の担当者がコーチングについてより深く学ぶことで、実務で活かせるだけでなく会社全体に向けてコーチングの考えを広めていくことも可能です。そのためにコーチングの勉強方法として資格取得を目指すことも一つの手です。
様々な民間団体があり、独自のカリキュラムを設定し認定証を発行しています。自社の考えに沿った内容やカリキュラムを見極めて受講することが大切です。
ここからは、コーチングについてより深く学ぶことができる3つのコーチング資格をご紹介します。
国際コーチ連盟(ICF)認定コーチ資格
こちらの資格は、国際的なコーチの非営利団体である「国際コーチ連盟(ICF)」による認定資格です。国際コーチ連盟(ICF)には、世界約140か国、31,000人以上の会員がおり、世界最大級のコーチングに関する団体です。
ICFでは、3種類の認定資格を提供しています。それぞれトレーニング時間やコーチング経験時間の要件が定められています。一番短い時間で取得できる資格は、ICF認定資格アソシエイト・サーティファイド・コーチ(ACC)です。
トレーニング時間60時間以上、コーチングの経験時間100時間以上が必要とされています。
一般財団法人生涯学習開発財団認定コーチ資格(認定コーチ)
こちらは、文部科学省の外郭団体である、財団法人生涯学習開発財団の後援を受け1998年にスタートした日本初のコーチ認定制度です。
初級者向けの「認定コーチ」、中級者向けの「認定プロフェッショナルコーチ」、上級者向けの「認定マスターコーチ」があります。
初級者向けの認定コーチの資格は、最短6ヶ月で資格取得が可能となっており、コーチングを学ぶ上で取り組みやすい資格といえます。
プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ(CPCC)
こちらの資格は、前述した国際コーチ連盟(ICF)に認定されたプログラムを提供しているCTIジャパンによる国際的なコーチングの資格です。
資格受験のためには、まずコアコースと呼ばれる5つのコースを受講したうえで、6ヶ月にわたる上級コースを修了することが必要とされます。
個別のコースを受講することも可能なため、資格取得はハードルが高いと感じる方も、自分に合った方法での取得が可能です。
まとめ
コーチングは、対話を通じて対象者の目標達成や成長の促進を支援する手法です。
一方的に教えるティーチングとは異なり、双方向のコミュニケーションであることが特徴的です。対象者の自主性ややる気を引き出し、対象者自ら成長していくサイクルが生まれます。
対象者の状況や与えられた仕事内容によって、上手にコーチングとティーチングを使い分けて対応していくことが人材開発を行う上で大切です。