会社が社員に求める目標と社員が立てる個人の目標には差があることが多いです。ここを近づけることで、目標を効率的に達成できるだけでなく、社員のモチベーション向上や優秀な人材の確保などメリットがあります。
そこで本記事では、各目標の概要を説明し重要な役割をもつコネクト力について解説します。併せて有効なフレームワークもご紹介します。
「会社が社員に与える目標」と「社員の個人的な目標」をつなげる鍵とは?
会社もそこで働く社員も、それぞれ目標を掲げて達成に向けて日々の仕事をこなしています。ただ、会社として社員にやってもらいたい目標と社員個人がやりたい目標にはどうしても乖離が生じます。
この状態を放置することでさまざまな問題が起こり、組織運営に影響がでる可能性もあります。具体的には、社員のモチベーション低下や優秀な人材の流出、経営不振などが考えられます。
そこで、まず「会社が社員に与える目標」と「社員の個人的な目標」の違いについてしっかりと認識しておく必要があります。
会社が社員に与える目標について
会社の究極的な目標は、「利益を出して成長を続けること」です。
具体的な数値目標として「利益〇〇円を達成する」という計画を立て、その数値を達成するためにあらゆる施策を考えます。具体的な数値目標ではなく「地域で一番の会社になる」「社員満足度の高い会社になる」というような目標にしても、その先には利益を出すという目標があります。
そしてこうした会社の目標を達成するために、さらに組織単位から個人単位へとブレイクダウンしたものが「各社員のやるべきこと・ミッション」となります。
営業部門なら「今期〇件の契約を取る」、製造部門なら「〇〇という商品を納期までに〇個生産する」などの目標です。また間接部門であれば、「経費を予算内に抑えながら担当業務を効率よく進める」ことが組織としてのミッションとする会社が多いのではないでしょうか。
このように各部門の目標が決まると、次は目標を達成するために個人のやるべきことが決められます。これが、「会社が社員に与える目標」となります。
社員の個人的な目標について
一方で、社員が立てる個人的な目標は「自分のやりたいこと」とイコールです。そもそも、社員は何のために会社で働いているのでしょうか。
「給料をより多く得たい」「こんな仕事がしたい」「こんな役職に就きたい」などお金やキャリアに関する様々な理由があります。そこから更に、「昇進するために必要な資格を取る」「給料を多くもらうための技術を身に付ける」などといった具体的な目標が生まれてきます。
しかし、例えば「将来的には別の業務に携わりたいので、その業務に関する勉強をする」などの目標は、会社が社員に求める目標からずれてしまう可能性があります。
このように会社が社員に求める目標と社員の個人的な目標は、どうしても乖離が生まれ避けることはできません。
2つの目標をつなげる鍵は「上司のコネクト力」
では、会社が社員に与える目標と社員個人が立てる目標に大きな差があった場合はどうしたらよいのでしょうか?
ポイントは「上司のコネクト力」です。ここで言うコネクト力とは、社員個人がやりたいこと・できることと会社から求められていることの共通項を一緒に見つけ出し、社員本人が納得して差を埋めることができるよう導いていく力です。
この上司のコネクト力をしっかりと活かすことで、2つの目標の乖離が少なくなり、部下はモチベーションを保ちつつより効率的な目標達成ができるようになります。
会社が社員に与える目標と社員の個人的な目標をより近づけるために、よく使われるフレームワーク「will・can・must」をご紹介します。
個人の目標設定を考える際に役立つフレームワーク
会社が社員に与える目標と社員の個人的な目標との関係性を把握するために役立つフレームワーク「will・can・must」をご存知でしょうか。
- wil:現在、社員がやりたいこと
- can:現在、社員ができること(必要な資格を保有している、遂行できる業務)
- must:現在、会社が社員に対して求めていること/社員がやるべきこと
社員の立てている目標をまず上記の3つに分類して、「will・can・must」のバランスを確認することで、社員の目標がどういう状態にあるか把握することができます。
会社が社員に与える目標と社員の個人的な目標を近づけることは可能
「will・can・must」の分析を通して、会社が社員に与える目標(must)と社員個人の目標(will)を近づけるにはどうすればよいかを検討するきっかけがつかめます。
例えば、まだまだ自分のできること(can)が少ない若手社員に対しては、canの中でも、特に将来若手社員がやりたいと思っている仕事(will)に役立つ技術・知識を気づかせてあげましょう。
そして、その将来に繋がるスキルと会社が社員に求めること(must)との乖離する部分を把握して、社員と共有します。
部下の目標と会社が部下に与える目標の乖離について把握できたら、ここからはそれらの目標を近づけるために、上司の「コネクト力」がカギになります。部下からヒアリングをする中で、部下自身も気づいていないスキルや目的も出てくるかもしれません。その際は本人にしっかり伝えてあげることも大切です。
このような形で「will・can・must」を用いて、社員個人のやりたいことやスキルを可視化することで、会社が社員に与える目標と社員個人の目標を近づけることが可能です。
会社が社員に与える目標と社員の個人的な目標を近づける方法
ここからは、部下の目標と会社が社員に与える目標を近づける実践的な方法について説明します。
- 前提:会社が社員に与える目標を押し付けないこと
- STEP1:社員の目標を「will・can・must」に分ける
- STEP2:部下の「真のニーズ」を引き出し、そこから会社が社員に与える目標との共通項を示す→「will」の中に内包される「can・must」を見つける
- STEP3:会社が社員に与える目標を盛り込める部分がないかを部下自身に考えてもらう→どうしても思いつかない様子なら、今部下ができること(can)を挙げて、活用できないかなどの方向性のヒントを与えるなどのサポートを行う
1. 会社が社員に与える目標を押し付けないこと
「押し付けられた」という感覚を抱いた部下はモチベーションが落ちてしまいます。部下が「自分の立てた目標を上司は受け入れてくれた」という安心感を持てるような雰囲気づくりを意識することが大事です。
STEP1:社員の目標を「will・can・must」に分ける
面談前に部下の立てた目標が分かっていれば事前にやっておきたいことですが、面談の場で分析してしまっても構いません。
部下は今業務をどこまで遂行できるようになっているか(can)の部分は、少なくとも日頃の業務を通じて見ていれば分かるのではないでしょうか。
部下が立てた目標が、部下がやりたいこと(will)か部下がやるべきこと(must)かを確認しながら、会社から提示される目標であるmustが、部下がやりたいこと(will)の中に内包されていないかを確認します。
STEP2:部下の「真のニーズ」を一緒に整理し、会社が社員に与える目標との共通項を示す
次に、部下が立てた目標の中に潜む部下の「真のニーズ」を引き出しましょう。部下がやりたいと言ったことが、現在の業務と違った時に「なぜそれをやりたいのか」「それをやることでどうなりたいのか」を問うことで「真のニーズ」が見えてきます。
部下自身も明確になっていなかった「真のニーズ」を整理し直す過程で、会社が社員に与える目標に合致する共通項があれば、具体的に示して「この部分を頑張ってもらえば会社が社員に与える目標にもつながる」と伝えて、部下のやりたいこと(will)と会社が社員に求めること(must)をコネクトしましょう。
部下は、自分の頑張りが会社のためにもなり得ることに気づき、会社から提示される目標も意識できるようになります。
面談の場でのコネクトが難しい場合は、「真のニーズ」を整理するところまでを一緒にやって、その後部下に自分で考えさせるようにしてもよいでしょう。
STEP3:会社が社員に与える目標を盛り込める部分がないかを部下自身に考えてもらう
最後に、部下の目標設定の中に会社が社員に与える目標を盛り込める部分がないか、部下自身に考えるよう促しましょう。「真のニーズ」を一緒に整理する中で見えてきたことを元に、部下に考えてもらいます。
例えば、「将来的には別の業務に携わりたいので、その業務に関する勉強をする」という目標の場合、今の業務でもその別業務に役立つ知識やスキルがあることを説明しましょう。
ヒューマンスキル系は、どの分野でも少なからず役に立つ知識・経験なので、目標のコネクトに使えるかもしれません。決して押し付けに聞こえないよう、決定権は部下にあることを重ねて伝えながら、検討するネタを与えるつもりで助言します。
まとめ
部下のモチベーションを上げつつ、会社が社員に与える目標もバランスよく個人の目標に盛り込むには、上司のコネクト力がポイントであることを説明しました。
ポイントは、社員に会社が求めることを押し付けないようにしながら、少しでも社員の「やりたいこと(will)」と「やるべきこと(must)」を近づけるようにすることです。