人材育成の分野で、日常の業務から少し離れてこれまでのことを振返り、内省することを「リフレクション」といいます。実務での「経験」を学びとしての「知恵」にしていく活動がリフレクションです。今回は、リフレクションの定義や効果、行う上での注意点について解説していきます。
「リフレクション」とは?
リフレクションの意味
リフレクション(内省)とは、人材育成の分野において「自分自身の仕事や業務から一度離れてみて、仕事の流れや考え方・行動などを客観的に振り返ること」です。失敗したこと・成功したこともすべて含めて見つめ直し、気づきを得て、新たな行動へとつなげる未来志向の方法論です。
リフレクションに初めて着目したのは、組織学習を研究していたマサチューセッツ工科大学のドナルド・ショーンがよく知られています。ショーンは、研究のなかで管理職・科学者・デザイナーなど数多くの専門職に就く人々を観察しました。その結果、働く中で現状も振り返りつつ、自分の行動や考え方をどうすべきか考えていることが重要だと知ります。この行動を「行為の中の内省(査察) 」として提唱しました。
ショーンは、「行為の中の内省(査察)」とは、実際にものごとが終わった後に内省するのではなく、継続的にものごとを行いながら現状を客観的に見つめることだと捉えています。
「リフレクション(内省)」と「反省」の違い
反省の主な目的は「誤り」を正すことです。これまでに起こった事実に対して、どこが悪かったのか自分自身の間違いについて思い出し、原因や理由について深く探ります。スポットを当てる部分が「間違い・ミス」であるといえます。
一方でリフレクションでは、「間違い・ミス」だけにスポットを当てるのではなく、フラットな視点で振り返って客観的に自分の行動を見つめます。「現状はこうである、それまでに自分はこんな行動をしてきた。例えば、もう少し上手くいく方法はあっただろうか?」と今後より一層の効果をもたらすために、未来志向で振り返るのがリフレクション(内省)の特徴です。
リフレクションの具体的な方法
リフレクションとは、簡単にいえば「物事について客観的に振り返ること」ですが、行う上ではいくつかポイントがあります。ここでは、リフレクションをする上で押さえておきたい3つの視点と、具体的なリフレクションの方法について解説します。
リフレクションを行う上での3つ視点
リフレクションを行う際にありがちなのが、出来事を漠然と思い起こし、自分以外の外的環境の問題点について振り返ってしまうことです。この視点だけでは、自分以外への批判的な感情を引き起こしやすく、改善につながりにくくなってしまいます。未来志向で建設的な改善を目指すために、リフレクションでは以下の3つの視点が重要と言われています。
・何が起きたのか「できごと」について
・他者やまわりの環境について
・自分自身について
この3つの視点において、リフレクションを進めていきましょう。
リフレクションの方法
具体的なリフレクションの方法を確認していきます。ステップとしては、主に以下の4つを段階的に進めていきましょう。
1、リフレクションする事例をピックアップする
2、一つの事例を工程ごとに分けて客観的に振り返る
3、それぞれの工程ごとに、「何ができて」いたか、その他で「何かできることはあったか」考える
4、次回の最適な方法を考える
漠然と考えているだけでは、本来どのポイントで改善が必要だったのかが明確になりません。そこでひとつの事例に焦点を当てることがポイントになってきます。さらに事例を細かく分解し、それぞれの工程を客観的な視点で振り返ってみます。
結果的に成功していたとしてもそれぞれの工程で、良かったことと、もっと改善の余地があったところの両面が見えてくるでしょう。それらをあぶりだしていくことで、次回の行動につながる学びが確立されていきます。
リフレクションの内容としては、以下の3つに注意してみるといいでしょう。
・実際の結果はどうであったか
・本来求められていた結果と実際とはどのような違いがあったか
・実際望んでいた結果になるためにはどこを変えるといいか
「間違い」ではなく、理想と結果との「違い」に気づき、改善策を練ることがポイントです。
リフレクションの効果
リフレクションは、個人の業務改善だけにとどまらず、チーム全体の効率化を図ることにもつながりますます。リーダーがリフレクションを行うことで、マネジメント能力の向上にも役立つでしょう。ここではリフレクションで具体的に効果が得られるポイントと、効果が出にくいリフレクション方法について解説します。
リフレクションの具体的な効果
リフレクションが個人やチーム、そして企業にもたらす効果として、主に以下の3つがあげられます。
・客観的に振り返ることで、新たな発見・気づきがもたらされる
・考え方が変化することで行動自体にも変化が生まれる
・仮説→検証する思考が定着し、成功も失敗も含めて今後の改善策を導くことができる
リフレクションは個人で行うことができます。個人が行動を振り返り、新たな気づきや改善が行われることで、チーム全体が活性化することにつながります。
また、リーダーがリフレクションを行うことで、マネジメントにも新たな変化が生まれます。チーム全体のマネジメントが効率よく行えれば、自然と業務自体も改善が進んでいきます。最終的にはメンバー一人ひとりがリフレクションを行うように進めていくことで、チーム全体の力が底上げされることになるでしょう。
要注意!間違ったリフレクションの方法
リフレクションで重要なのは、いいことも悪いことも含めて客観的に振り返ることです。しかし、前述した「反省」と混同してしまったり、視点を他者に向けてしまとうことで、人間関係が悪化してしまうケースもあります。回避すべきポイントは主に4つです。
・どこでどのような間違い・失敗が起きたのかに着目してしまう
・誰の行動が良くない結果につながったのかを突き詰める
・原因となった人に対して反省させたり言い訳させたりする
・失敗点にばかり注目して、学習が見られない
リフレクションにおいては、誰が間違いを犯したは問題ではありません。今後、どの点に改善を加えると「より良くなるか」を考えることが重要とされます。リフレクションを行うときには、これまでの考え方や行動にどのように変えていくと良いのか、建設的に考えることが大切です。
まとめ
人材育成やチームの活性化において、リフレクションは非常に効果的です。特にビジネスの変化が速くなり、正しさという物差しが曖昧になってきている現代では、未来志向で改善していく姿勢が重要になっています。正しいリフレクションの習慣を身に着けることで、経験を学びに変え、未来志向のアクションにつなげていきましょう。