教育制度を整えることで、社員のスキルアップだけでなく、モチベーション向上にも役立ちます。では、具体的にどのような制度があるのでしょうか。今回は代表的な教育制度であるOJT、OFF-JT、SDについて解説します。
広く知られているOJTとは?
社内で取り入れやすい教育制度として、広く知られているのがOJTです。OJTとは「On the Job Training」の頭文字を取ったもので、職場内において実務経験を通して、社員の教育を行うことをいいます。教育を受ける部下はもちろん、指導者となる上司も実務中に対応することができるため、場所を移動したり、仕事から離れたりしなくても知識や技能の習得および指導ができる直接的な教育方法です。
OJTのメリット
OJTを実践することで得られる主なメリットは以下の通りです。
1.実践的に鍛えられる
座学研修などとは異なり、OJTは実際の現場で知識の習得ができる点が大きなメリットといえるでしょう。発生した疑問や不安をその場で解決できるため、具体性があり、即時性があるため、実践的に鍛えることができます。
2.成長度に応じた計画変更ができる
OJTでは、事前にいくつかの目標を設定し、決められたカリキュラムを決められた期間のなかで計画的に実施していきます。
しかし、進捗状況には一人ひとりばらつきがあるでしょう。OJTは現場で対応するため、予想に反して著しく成長している社員がいる場合は、計画を前倒して新たな目標に向けた活動に切り替えることも可能です。このように、個々の成長度に応じて計画の変更について柔軟に対応できる点もOJTのメリットといえそうです。
3.低コスト
経営戦略を考えるうえで、いかにコストをかけずに効率よく人材育成に取り組むかという課題は非常に重要です。その点、OJTは専任講師や研修を外注する費用はかかりません。また教える側の社員は現場を離れる必要がないため、比較的簡単に実施することができます。
OJTのデメリット
1.指導者により進捗度や習熟度に差異が出やすい
ランニングコストを抑えることができるOJTですが、その成功は指導者の腕にかかっています。指導者には、指導力が問われることはもちろん、実業務と教育のバランスを取るスケジュール管理能力も求められます。指導者のスキルにより、習熟度や進捗度に差が出やすいため、注意が必要です。
2.体系的な指導が難しい
OJTでは実践と振り返りを通して、経験学習的に教育していきます。そのため、座学に比べると論理的・体系的な教育機会の提供は難しくなってしまうというデメリットがあります。
OFF-JT、SDとは?
ビジネススキルが習得できる教育制度はOJTだけではありません。OJTと異なるアプローチにより、社員のスキル習得を目指す方法にOFF-JTとSDがあります。それぞれ詳しくみていきましょう。
OFF-JT
職場での実践的なスキル習得を目指すOJTと異なり、業務から完全に切り離して、職場とは異なる場を設けて行う研修がOFF-JTです。OFF-JTは「Off-The-Job Training」からその名がつけられました。外部指導者や外部研修を設け、授業形式の座学研修を行なうケースが大半です。
研修の専門家ではない現場の先輩や上長が指導者になるOJTと異なり、OFF-JTは研修専任のスタッフが指導者となります。そのため、理論的で体系的な知識の習得がしやすいというメリットがあります。
また、集合研修としてグループワークをとり入れるケースも多く、参加者同士での交流ができる点も大きなメリットになるでしょう。OFF-JTの研修内容は、実業務に直接的に関係のないものや、間接的に関係しているものなど多岐にわたります。主なOFF-JTの例は以下の通りです。
・ロジカルシンキング研修
・コミュニケーション能力研修
・マネジメントスキル研修
・グローバル人材育成セミナー
・人事評価制度講座
・マナー研修
・情報セキュリティ講座
しかし、いくつかデメリットもあります。まずは、外部講師や研修などの費用が発生するという点です。また、どのような研修内容を実施するのか、どのようなスキルを持つ講師が必要なのかなど、選択が難しい点もデメリットといえそうです。社内で研修を企画するとしても、業務から離れた環境で実施するという点で企画の難しさもあるようです。
SD
「Self Development」、つまり自己啓発のことをSDと呼びます。社内外のセミナーに参加したり、書籍を通じて学びの機会を得たりと、その方法は多岐にわたります。業務に関連する資格取得やスキル習得もこれにあたります。会社の制度としては、セミナーの実施や資格取得にかかる費用の負担、通信教育の情報提供、外部セミナーのあっせんなどが挙げられます。
SDを実施するメリットは、社員の選択の幅が広く自由度が高いことです。OJTやOFF-JTと異なり、あくまでも学ぶ機会や場の提供を行うことにとどまるため、研修の範囲や予算、方法を自由に設定することができます。また、eラーニングなどを利用すれば、隙間時間を利用することもできるため、時間を有効に利用できる点も大きなメリットになるでしょう。
一方で、その自由度の高さがデメリットにつながるというのも事実です。SDに強制力はないことが多いため、途中で挫折する可能性もあります。これは、自分自身で学習を進めなければならないというシステムと、他者とのかかわりがない環境から生まれるデメリットです。
今後求められる人材育成とは
人材育成の手法として、OJT、OFF-JT、SDがありますが、いずれの方法にもメリットとデメリットがあります。そのため、人材育成制度の充実を考えたときに最も有効な方法は、いずれかの手法のみに頼るのではなく、複数の手法を組み合わせて人材育成に取り組むということです。
例えば、OJTの前にOFF-JTによる座学研修を実施し、基礎的な知識を習得したうえで職場に入れるような環境を整えます。これにより、OFF-JTで学んだことをOJTで実践できるようになります。また、OJTとOFF-JTを並行して行うことで、実践的なスキルは職場でOJTを通して学び、不足している知識はOFF-JTで補うということも可能です。研修のベースがあれば、モチベーションを維持しながらSDに取り組むことも可能でしょう。
まとめ
人材育成の代表的な手法として、OJT、OFF-JT、SDがあります。この3つの方法にはそれぞれ、メリットとデメリットがあるため、いずれかの手法に頼り人材育成制度を整えようとするのは難しいでしょう。複数の手法を組み合わせ、より充実させた制度を備えられるよう工夫しましょう。