マインドセットとは、これまでの経験や教育、先入観から作られる思考パターンや固定化された考え方のことです。近年では、知識・スキルよりも、マインドセットがポジティブであるか否かが、ビジネスの成果に大きな影響を与えると言われています。今回は、マインドセットの意味や活用方法について説明します。
マインドセットの意味と種類
マインドセットとは、これまでの経験や教育、先入観から作られる思考パターン、固定化された考え方のことです。簡単にいうと「無意識の思考のクセ・思い込み」です。
例えば、現在、大リーグで活躍する日本人選手は多くいますが、一昔前にはそのような選手はほとんどいませんでした。この状況を、スポーツコメンテーターの為末大氏は「1995年に大リーグにチャレンジした野茂選手の事例を見て、他の選手が『それは可能なことなのだ』とマインドセットが変わったのだろう」と表現しています。別格の存在としてとらえていたメジャーリーグで、自分と同じ日本人選手が活躍しているという事実が、多くの選手の意識(マインドセット)を変えたという事例です。
成長マインドセットと固定マインドセット
マインドセットの提唱者の一人であるスタンフォード大学キャロル・S・ドゥエック教授の研究結果によると、マインドセットは「成長型」と「固定型」の2種類に大別されます。
成長マインドセット(グロースマインドセット)は「自分の能力は努力次第で成長させることができる」という考え方であり、固定マインドセット(フィックストマインドセット)とは「能力はもともと決められており変わらない」という考え方です。ビジネスにおいては、成長マインドセットが望ましいことは言うまでもありません。
ただし、多くの人は成長マインドセットと固定マインドセットの両方を持っています。状況によってマインドセットが変わることもあれば、自分の意志でマインドセットを変えることも可能です。
個人のマインドセット
マインドセットを理解には、まず自分自身のマインドセットの傾向をつかむことが必要です。ドゥエック氏の実験によると、成長型、固定型マインドセットの違いが顕著に表れるのはミスを犯した時です。
成長マインドセットの人は、ミスをしても事実を受け止め問題解決に取り組みます。しかし、固定マインドセットの人はミスから目をそらし、自己防衛する傾向があると言われています。
企業や組織のマインドセット
マインドセットは個人だけでなく企業や部署など、集団にも存在します。企業理念、歴史、市場、商品特性、成功体験などにより企業も独自の価値観を保有しているのです。
例えば、スピーディな判断、社員自身が自ら考えて動いていくスタンスのベンチャー企業と、トップダウンの指示のもと組織的に動く大手企業では、価値観や仕事の優先順位が異なってきます。また、同じ企業内であっても、仕事の内容によってマインドセットも異なる場合が多くあります。
また、市場や顧客が変化すればそれに合わせたマインドセットが必要になります。しかし、人材の出入りが少ない集団ほどマインドセットは強固になる傾向があると言われています。
成長マインドセットを獲得する
脳科学の分野では、人間は行動の95%を無意識に行っていると言われています。これまでの経験や社会の常識に影響された、その人なりのマインドセットを持っているのです。もちろん良いマインドセットもありますが、中には自分の能力を規制しているマインドセットもあります。
そのためマインドセットは「変えられる」「広げられる」「選べる」と認識し、意識的に成長型マインドセットを獲得していくことが、人や企業の成長に必要になってきます。何かのきっかけで固定マインドセットの人が成長マインドセットに変わると、これまで行動を抑制していたストッパーが外れ、大きな能力向上が見込めます。
マインドセットを変化させるステップ
一般的に、マインドセットを変えるには「知る→理解する→身につける」という3ステップを実現することで可能になります。
ステップ1.マインドセットの存在を知る
ステップ2.自分のマインドセットを理解する
ステップ3.必要なマインドセットを身につける
マインドセットは、他人の体験に触発されたり、自分の気づきから変えることを選択したりと、ほんの小さなきっかけで変わる場合もあります。しかし、変わるスピードは個人差があります。一番大きな効果が期待できるのは実際に体験することですが、研修などによって正しい知識を身に着けることも効果的です。身に着けた知識を元に、実務の中でマインドセットを活用していくといいでしょう。
マインドセットに関する研修
近年は、マインドセットの研修を行う企業も増えています。新卒社員入社、海外赴任前研修、管理職登用など、ポストや環境が変わる前のマインドセット研修は効力を発揮します。
また、優秀なプレイヤーが、必ずしも良きマネージャーにならないケースがあります。自分の仕事に全力を出すというマインドセットから、部下が動きやすいように環境・仕組みを整えるというマインドセットに切り替わらないためです。また、女性に多いのですが自分には管理職が「無理」と思い込んでいるケースもあります。
マインドセット研修によって、社員が自分の能力を規制するマインドセットを取り払い、自信を持って仕事に取り組むようになれば、企業の成果につながっていきます。実際にマインドセット研修によって効果が出ている事例を紹介します。
研修例
(1) 丸井
女性社員のマインドセットを目的に女性取締役のワークショップを開催。1年で上位志向の割合が1.5倍に増加(41%→64%)。
(2)ジュピターテレコム
次世代のリーダー候補の女性社員に対し、管理職へのマインドセットや現場体験、通信教育などを実施。座学だけでなくさまざまな部門でのOJTを実施。全員、現場での実務を経験。
その他の研修例
(1)新入社員研修
ビジネス経験がない新卒は吸収力が高く、社会人となった最初の段階で成長マインドセットを身につけさせる研修
(2)レンタル移籍型研修
大企業とベンチャー企業の人材を移籍させることで、社員に必要なマインドセットを身につけさせる研修
(3)海外赴任前研修
グローバルビジネスで成果を上げるマインドセットを海外赴任前に獲得させる研修
まとめ
成長マインドセットの社員が増えれば社内は活性化し、チャレンジングな社風に変わっていきます。自分のマインドセットの認識することで、社員の潜在能力は開花していきます。ビジネスに必要なマインドセットは変えられるものだと認識し、実務に活用していくことをおすすめします。