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退職率30%からの組織改革。ラクスルの成長を支えた人事制度・カルチャーづくりとは?

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ラクスル株式会社 取締役CFO 永見世央さん/ヤフー株式会社 コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長  伊藤羊一さん

「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」をビジョンに掲げ、2009年に創業したラクスル株式会社。印刷シェアリングプラットフォームを軸に事業を拡大させ、2015年には物流事業にも進出。印刷・物流という伝統的な業界の中で、ITを武器にした新しい事業を創出し注目を浴び、2018年5月には東証マザーズに上場を果たしました。

同社の取締役CFOである永見さんは金融・投資といったキャリアなどを経て、2014年にラクスルにジョイン。以後、経営計画から財務、人事に至るまでを手がけ、事業成長に寄与されてきました。現在約200名の社員を抱え、上場に至るまでビジネスをグロースさせてきたラクスルの組織づくりとは?――Yahoo!アカデミア学長である伊藤羊一さんが聞き手となり、永見さんに話を伺いました。

ラクスル株式会社 取締役CFO 永見世央さん/ヤフー株式会社 コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長  伊藤羊一さん

ラクスル株式会社 取締役CFO 永見世央さん(写真左)

2004年に慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、みずほ証券株式会社にてM&Aアドバイザリー業務に従事。2006年から2013年まで米カーライル・グループに所属し、バイアウト投資と投資先の経営及び事業運営に関与。その後株式会社ディー・エヌ・エーを経て2014年4月にラクスル株式会社にCFOとして参画し、同年10月に取締役就任。ペンシルバニア大学ウォートンスクールにてMBA取得。

ヤフー株式会社 コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長  伊藤羊一さん(写真右)

日本興業銀行、プラスを経て、2015年にヤフーに入社。Yahoo!アカデミア学長として次世代リーダー育成を手がける。また、グロービス経営大学院でリーダーシップ科目の教壇に立つほか、インキュベーションプログラムでメンター、アドバイザーを務めている。著書に『キングダム 最強のチームと自分をつくる』、『1分で話せ』。


退職率30%から「会社を創りなおす」つもりで取り組んだ、組織改革

伊藤 : 永見さんはM&Aアドバイザリーや投資家としての経験を積んで、ラクスルに入社したんですよね。

永見 : そうですね。私はカーライル・グループで投資家をやっていたキャリアが一番長いんです。投資案件で失敗する要因としては、「投資するテーマやタイミングを間違える」「投資先企業のマネジメントや組織に実行力がない」という大きく2つがあり、後者の「組織に実行力がない」というテーマに関しては、企業の努力でいかようにも対応できるものです。しかし、投資家という立ち位置では、実行力を持たせることに100%コミットすることができず、もどかしさがありました。だから経営をやりたいと思っていました。

伊藤 : 実際にやってみてどうでした?

永見 : 人が有機的につながって事業が成長していくことを実感できていて、まさに想像していた経営像ではあります。ですが、非常に大変でしたね(笑)。

伊藤 : 具体的には、どういった点が大変でした?

永見 : 私がラクスルに入社したのが2014年4月。その当時、正社員が15〜20名という規模だったのですが、退職率が30%くらい(笑)。決して良好とは言えない組織状態でした。

伊藤 : それは大変だ(笑)なぜそのような状態だったんでしょう?

永見 : その頃のラクスルは15億円という大型の資金調達を行い、会社自体が急激にグロースをしていたフェーズでした。そうしたこともあり、即戦力で活躍できるスキルを重視した中途採用を行っていたんです。毎月新しい人を迎えるような状態だったのですが、ラクスルのビジョンやミッション、バリューの共感度が低く、スキル重視で入社したメンバーがたくさんいた。そこで、ほころびが出てしまったんです。

ラクスル株式会社 取締役CFO 永見世央さん

伊藤 : なるほど。それで退職者が次々と出てしまい、退職率が30%以上になってしまった。――それから組織の立て直しに着手したと。

永見 : 「会社を創りなおす」くらいの改革をしました。私たちのようなスタートアップは構造上、起業家・ファウンダーが勢いよく成長する一方で、その他のメンバーがその情報量や成長について来れなくなるという課題があります。その課題を払拭するためには、起業家・ファウンダーとメンバーの結節点を作る必要があると感じました。その上で、ビジョン・ミッション・バリューを再定義し、浸透させることで経営サイドとメンバーのベクトルを合わせていきました。

伊藤 : ビジョン・ミッション・バリューを再定義して浸透させるために、どんなことに取り組んたのですか?

永見 : まずベーシックな話ではありますが、マネジメント層がビジョン・ミッション・バリューを徹底的に議論し、考え抜くということをしました。そうですね…だいたい4〜5ヶ月くらいの時間をかけたと思います。

そのくらいのパワーをかけ、言霊を込めてビジョン・ミッション・バリューを再定義しないと、絶対メンバーに伝わるものになりませんから。そうして生み出されたビジョン・ミッション・バリューは、1泊2日の合宿形式でメンバーに伝えていきました。合宿では、ただ伝えるだけではなく、ワークショップ形式を取り入れました。まさに伝達と対話です。

伊藤 : 伝達する際に意識したことはありますか?

永見 : 一つ目は、「ラクスルがやらないこと」を明確にしたということですかね。例えば、ラクスルは「BtoB向けのシェアリングプラットフォームになる」と宣言しているので、BtoC向けの事業はやらない、といった具合にです。やらないことを明確にすると、その範囲で従業員が自由に動けます。

会社として従業員に提供できる価値、例えば待遇なども同様です。会社として従業員に提供できることと、従業員が会社に期待すること、この2つにギャップが無いことが理想です。そのために、会社としてどこに注力しているのかと同時に、どこに注力しないのかも伝えておくことが大切だと思っています。

二つ目は、ラクスルには、サプライヤー開拓やカスタマーサポートなど、現場に向き合うオペレーションを主体としたチームもあり、IT職だけの会社ではありません。そこが一体となっていることが強みなので、各職種に応じて、ビジョン・ミッション・バリューを具体的な言葉で翻訳し、伝えています。全体最適をやりつつ、個別最適もしっかりやるということですね。

伊藤 : なるほど。この伝達と対話を早期に実施してきたことが、今のラクスルの成長に繋がっていると。

永見 : はい。社員数が約200名になった現在でも、年1回は必ず合宿を行っていますね。今年5月にも実施しましたし、できる限りやり続けていきたいと思っています。

行動規範をそのまま人事評価に。独自のカルチャーをつくることが、会社の強みになる

永見 : 先ほどお話ししたビジョン・ミッション・バリューの再定義や浸透も大事なのですが、一方で社外取締役から改めて「カルチャーを作りなさい」とアドバイスを受けたことがありました。ビジョン・ミッション・バリューは“ハード”。その中にある“ソフト”であるカルチャーができあがると、会社としての大きな強みになると。

伊藤 : カルチャーを作っていくことはとても大事ですね。ただ、カルチャーって何かの積み重ねの結果、変わるものだと思っていて、そのためには僕は、時間をかけるしかないと思ってます。ずっと積み上げていくしかない。

ヤフー株式会社 コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長  伊藤羊一さん

永見 : そうですね、同感です。ラクスルは独自のカルチャーを作っていくためにも、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンを要素分解して、ラクスルスタイルと呼んでいる行動規範を次の3つに絞りました。

  • Reality 解像度の高い課題設定
  • System 課題解決と仕組み化
  • Cooperation 複雑な事業遂行のため異能・多能の連携

実はこの行動規範は、そのまま人事評価の軸になっています。行動規範自体がコンピテンシーになっていて、社員のグレード別に要件が決まっているんです。逆にいうと、いくら結果を出しても行動規範に則っていなければ、会社としては評価しない、ということでもありますね。

伊藤 : なるほど、それはシンプルで分かりやすい。それに評価に組み込むことによって、この行動規範を「自分事」として社員が語れるようになりますね。

永見 : 正直、そのレベルまでに達するのはまだまだではありますが…。「自分事」として語れるようにしていくことがカルチャーづくりに結びつくと考えていますね。

組織情報を数値化して「ヘルシーな状態」かを定期点検

伊藤 : ラクスルでは、社員のマネジメントはどのように行っていますか?

永見 : リンクアンドモチベーションが提供しているサービス「モチベーションクラウド」を導入して、組織がヘルシーな状態になっているかどうか細かくチェックをしていますね。不健康な組織に関しては、何が問題なのかを3ヶ月に一度くらいの頻度で定期点検しています。また、個人の状態をピンポイントで把握するために、こちらはマネージャーではなく人事がメンバーに直接ヒアリングすることもあります。

伊藤 : どのような組織状態が、ラクスルにとってヘルシーなんですか?

永見 : もっとも大事にしているのは、その組織が会社の方向性や戦略に共感しているかです。事実、会社がフォーカスしていることに対して期待値と満足度が高く、フォーカスしていないことに対して期待値と満足度が低い組織が、一番パフォーマンスが高くなっていますね。

伊藤 : お互い、実態と期待値がすり合っている状態ですね。では、各チームにおけるマネジメントで大事にしていることは何ですか?

永見 : コミュニケーションの量と質ですね。量で言うと、マネージャーには「コミュニケーションに時間を使いなさい」、「部下と向き合いなさい」と発信しています。質で言えば、部下のこれからのキャリアを考えてコミュニケーションを取ることですね。

伊藤 : コミュニケーション方法としてヤフーでは1on1を導入していて、僕自身、最初は「面倒くさい」と思っていたんだけど、3年やってみて1on1は上司部下の信頼関係構築に必要なものだと感じましたね。

永見 : ラクスルでも1on1をやっていますが、全員でミーティングすることも重視しています。当事者同士のミーティングで密室的に物事が決定してしまうのは良くないので。あとは、経営層のメンバーが社内をぶらついてメンバーたちとコミュニケーションを取ったりしてコミュニケーションする場を設けていますね。

ラクスル株式会社 取締役CFO 永見世央さん

 

”理性と感性が織り合う意思決定”ができる組織へ

永見 : 人事や組織の動きに対して、もっとアナリティクスやエンジニアリングが入るべきとだと思っています。ヤフーさんではそうした取り組みは進んでいますか?

伊藤 : パフォーマンスや人事労務などデータ管理がバラバラになっていて、それができていない…。なので、一元管理できるようにデータ統合を進めているところですね。

永見 : 人事・組織を統合的にデータ管理し、分析できるサービスって意外にないですよね。ヤフーさんだったら自分たちで作っちゃった方が早そうですね(笑)。

伊藤 : そうなんですが、いろんなデータが蛸壺化してしまって、とにかく大変(笑)。HRテックがなかなか進まないのは、それが原因だと思います。

それでは最後に、永見さんがこれから取り組んでいきたいと頭に描いているものを教えてもらえればと。

永見 : まず一つ目が、これは人事だけでなくコーポレート全体に関することですが、全てのものをデータドリブンで推進していくことです。そして二つ目は、“理性と感性が織り合う意思決定”ができる組織にすることです。

組織の意思決定において、理性・感性の両方がありますよね。理性は、データドリブン、冷静な人事判断、経済合理性、システムへの統合など。感性は、人を中心に考える、社員個人のシチュエーションを切にしてあげる、自由、長く在籍している人を大事にするなど。

それらに「折り合いをつける」のではなく「上手に織り合うこと」でラクスルをさらにスケールさせることです。それにはバランスやトレードオフを絶えず意識しないといけませんが、それができる人や組織ってなかなかいないと思っていて。意思決定は、理性だけでもダメ。感性だけでもダメ。上手に「織り合う」ことができる組織へと成長させていきたいですね。

ラクスル株式会社 取締役CFO 永見世央さん/ヤフー株式会社 コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長  伊藤羊一さん

(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:大沼寛行)

 


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