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福島のカーディーラーが挑む。設立62年目で見つけた「対話がつくるカルチャー」と「評価制度変革」とは。

投稿日:
福島トヨペット株式会社 組織開発担当 取締役 佐藤藍子さん(写真右)/株式会社ヒューマンバリュー 代表取締役副社長 阿諏訪博一さん(写真左)
 

1956年の設立以来62年にわたり地域のカーライフを支えてきた福島トヨペット株式会社。県内に22店舗を展開し、従業員数は600名(20188月時点)、売上高は2916800万円(2017実績)を誇り、福島県内でも有数の企業です。

今では、パフォーマンスマネジメント変革の取り組みについて、外部に対しても発信している同社ですが、数年前までは、トップダウンの文化が根強くあり、社員同士の対話や店舗間の連携も希薄だったといいます。

そこに風穴をあけるべく行動を起こしたのが、組織開発担当・取締役の佐藤さんです。佐藤さんは、人材開発・組織変革に関する実践と研究開発を手がけるコンサルティング会社、ヒューマンバリューの助力を得ることで、次々と新しい風を送り込み、次第に福島トヨペットの旧態依然とした風土を変化させてきました。佐藤さんが実現したかった組織・社員の像、そして、それらをどのようにして現場の社員と一緒に創りあげてきたのか、その歩みについて伺いました。

 ■福島トヨペット株式会社 組織開発担当 取締役 佐藤藍子さん(写真右)
都内の大学・大学院にて法律を学んだのちに地元である福島に戻り、父・佐藤修朗氏が経営する福島トヨペットに2014年入社。人事担当として組織開発に着手する。現在は、組織開発を専任している。

■株式会社ヒューマンバリュー 代表取締役副社長 阿諏訪博一さん(写真左)
学習する組織の実現に向けて、組織変革コンサルティング、学習プログラム開発、サーベイ開発等に取り組む。パフォーマンス・マネジメント革新(PMI)研究会の事務局長も務めている。

トップダウン文化を打破するために。

――まず、組織改革に着手された背景についてお伺いしたいと思います。2014年に佐藤さんは、父である佐藤修朗氏が社長を務める福島トヨペットに人事として入社し、同年からさっそく組織改革に着手されています。入社した際に、どのような課題を感じたのでしょうか?

佐藤 : 私が入社する前から、福島トヨペットは「ftpブランド」(Fukushima Toyopet)という企業理念を構築しており、ftp宣言(ミッション)ftpビジョン掲げていました(※)。父からもその話は聞いていたので、「すごく働きがいのある会社なんだ」と思っていたのですが、理想と現実にはギャップがありました。

社員一人ひとりに企業理念は浸透しておらず、販売店特有のトップダウン文化が根強く残っていました。みんな数字を追うことに必死で、個性を認め合うという雰囲気ではありませんでしたね。外から来た私は、余計に息苦しさを感じたのだと思いますが、同時に、それこそが当社の課題だと感じたことが、組織改革に着手した背景です。

※福島トヨペット 企業理念紹介ページ https://www.fukushima-toyopet.jp/company/idea/

福島トヨペット株式会社 組織開発担当 取締役 佐藤藍子さん

――その課題を解決するために、どのようなアクションを取られたのでしょうか?

佐藤 : まずは社長である父に相談しました。父もちょうど組織改革の必要性を感じていたところで、父が偶然、ヒューマンバリューさんが出版した組織改革に関する書籍を手にしていたんです。それを父も私も読んで感銘を受けました。組織改革の支援を受けるために、すぐにヒューマンバリューさんにアポイントを取り、話を聞きに東京に向かいました。それが、2014年の春頃です。

阿諏訪 : 福島トヨペットさんが抱える課題をお話しいただき、ご提案したのは「お互いが理解し、話し合える土壌を作ること」でした。表面的に会社の仕組みだけを変えても、根幹の課題を解決するのは難しいので、カルチャーから変えていくことが必要でした。

社員が想いを共有し、理解し合う「ラージスケールミーティング」=「ReBORNミーティング」


佐藤
 : 2014年当時の社内は、横のつながりも非常に希薄でした。当社は福島県内にトヨタ車のディーラーを22店舗展開しているのですが、店舗間のつながりは試乗車の貸し借りなど業務上必要最低限。店舗を超えたコミュニケーションはほどんど無かったのです。

阿諏訪 : そこで最初に計画したのが、福島トヨペットさんの全社員を対象とした「ラージスケールミーティング」です。実現したい状態に向けて、外側から変えようとするのではなく、自分たちで変化を生み出せるような土壌をつくっていくことがねらいです。互いの理解や大切にしている価値を共有することを通じて関係の質を高めていこうと考えました。

具体的には、20147月の定休日に社員の皆さんを集めていただき、初回は「未来を想像する」をテーマに、二人一組になってお互いをインタビューし、そこから対話の輪を広げて考えを深めていきました。また、各社員が大切にしていきたいことを、折り紙などを使って自由に表現するといったワークも行いました。論理で考えるだけでなく、体験しながら自ら体感していく方法です。これらを通して、店舗を超えて社員同士を知り、社内コミュニケーションの素地を作ることが狙いでした。

▼ 実際のラージスケールミーティング様子 ▼

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――突然そういった取り組みを進めたことで、社内からの反発はなかったのでしょうか?

佐藤 : 「ラージスケールミーティングって何?」という未知のものに対するある種の恐怖心もありましたし、定休日に集まるということにも抵抗がありました。ただ、そうしたネガティブな反応も想定していたので、事前に若手を中心とした15名ほどで事務局を作ってこの取り組みをきちんとデザインし、浸透させるような活動も進めていきました。 

――初めて「ラージスケールミーティング」を開催してみていかがでしたか?

佐藤 : 従業員同士が自分の言葉で語り合い、想いを共有することは、絶対にいい効果を生むと思いました。とはいえ、たった1回の実施で何か劇的に変化したわけではありませんでした。1年くらいでは、カルチャーは変わらないんだなと感じましたね。

その後は、1回の「全社員大会」「ReBORNミーティング」に改め、毎年開催しています。また、 “立場や発想の異なる社員同士が集まり対話する”というカルチャーを根付かせるためには、各店舗の店長たちーーつまりはリーダー層の意識改革が必要だと感じました

阿諏訪 : そこで、新たに「リーダーシップジャーニー」という取り組みを2015年からスタートさせました。2日間の合宿形式で、“リーダーシップの在り方”などを議論してもらったのです。

株式会社ヒューマンバリュー 代表取締役副社長 阿諏訪博一さん

リーダーの本音を聞き、対話の中で心を解きほぐすことで得たターニングポイント

――すぐにまた新たな施策を始められたのですね。

佐藤 : 店長に向けて合宿の呼びかけをしたところ、「2日間も店舗を不在にするわけにはいかない」といった声も聞かれたので少し不安でしたが(笑)、最終的には全員参加してくれました。

先ほどお話ししたように当社は、トップダウン文化が強く根付いており、それが大きな課題でした。しかし、「リーダーシップジャーニー」を通して店長たちの考えにじっくり耳を傾けてみると、決して偉そうにしたいわけではないということが分かりました。「店長としてメンバーにどう接していいか分からない」というのが本音だったんです。

阿諏訪 : 「店長というのは絶対的な存在なんだ」と、これまで見てきた店長像に縛られて、自らを型の中に押し込めてしまっていたんです。

佐藤 : 「リーダーシップジャーニー」では、そうした店長の考えや想い、固定概念を対話の中からときほぐしていきました。リーダーシップのあり方を振り返り、ひざをつき合わせて話したことで、店長自身が自然体でメンバーと接すればいいんだと理解してもらえる場になりました。ここがひとつ、ターニングポイントになった気がします。

――2014年に初めて開催された「ReBORNミーティング」、2015年に実施された「リーダーシップジャーニー」を経て、徐々に組織が変わっていった実感はありましたか? 

佐藤 : 全く違いますね(笑)。2014年の「ReBORNミーティング」の写真を見ると、社員の表情がどこか硬いんです(笑)。しかし、毎年「ReBORNミーティング」を開催して、社内の交流が生まれることで少しずつ笑顔が増えていきました。2018年に開催した「ReBORNミーティング」の写真は、本当にみんな笑顔で、こんな良いを顔するんだなあと嬉しくなりましたね。

福島トヨペット株式会社 組織開発担当 取締役 佐藤藍子さん
 

そういったカルチャー形成ができていく中で、ついに人事評価制度の改革に着手しました。人事制度についてはReBORNミーティング」でも意見が上がっており、社員も違和感を感じていたんです。

人事評価シートを「白紙」に。

――人事評価制度の改革について、具体的にお聞かせください。

佐藤 : さまざまな活動を通してカルチャーは変わってきていましたが、人事評価に関してはこれまで通り、「目標販売台数」など、基本的に数字が全てでした。しかも、店舗ごとに閉じられた環境のなかで評価が行われていました。これらは、目指すカルチャーとは矛盾していると考えていたところ、ReBORNミーティングで社員たちから「人事評価を変えてください!期待しています!」という励ましもあり、改革をスタートしました。そこから、評価制度改革のプロジェクトチームを作り、まずは現場の実態を見たり、社員へのインタビューを進めていきました。

阿諏訪 : そうした活動から見えてきたのは、目標は会社から与えられるもので、自ら目標を立てるという意識が弱いという課題です。というのも、評価において社員が記載するのは自己評価の項目だけで、目標を立てる形式にはなっていませんでした。

佐藤 : そこで、人事評価シートは白紙にしました。

――白紙に?

佐藤 : 自分で目標を立てて、その目標を達成するために、どのようにアクションしていくのかを書いてもらい、上司との面談に臨むという流れにしました。また、評価も一方的に店長が決めるのではなく、マネージャーが集まって評価軸を考えつつ、プロジェクトチームのサポートも得ながら決定しています。さらに、各店舗の目標も社員で話し合いながら決めるようになりました。

阿諏訪 :こういったケースでよくあるパターンは、人事が実態を調査し、経営に上げて、人事と経営で人事制度を作っていくパターンです。しかし、ここで福島トヨペットさんが良かったのは、調査結果をあらためて現場の店長やマネージャーに共有して、さらに議論する場を作ったことです。お互いが理解しあって、みんなで進んでいこうという姿勢ですね。

その気持ちが伝わったのか、人事評価制度について検討するミーティングの場で、参加していた店長から「これまで人事制度は会社から降りてくるものだと思っていたけど、今回は一緒に作っていっている気がします。」という言葉が聞かれたのはとても印象的でした。

また、もう一つ大切なことはは人事評価制度をつくって終わりにしないことです。多くの場合、制度を導入しただけでは上手くいきません。現場の実践状況を見ながら、よりよくなるための支援を継続的に行うことが大切です。

株式会社ヒューマンバリュー 代表取締役副社長 阿諏訪博一さん

――大きな変革ですね。なかなかこのような変化を起こすことは難しいと思うのですが、社内でどのように合意形成をとっていったのでしょうか。

阿諏訪 : 「ReBORNミーティング」を通して、上司と部下が対話するというカルチャーが醸成されていたことが、人事評価制度変革の合意形成に奏功したと思います。対話文化が生まれ始めていたからこそ、それが道筋となり、経営層やマネージャー層、そして現場の承認がスムーズになったのです。逆に、カルチャーという土台がないまま制度改革だけ行っても、上手く運用に乗らないケースは多々あります。

市場環境の変化が目前に。社員がイキイキと仕事をしてお客様に選んでもらえる会社にしていきたい。

――さまざまな取り組み・変革によって、福島トヨペットさん自体がまさに「リボーン(再生)」していると思います。今後、福島トヨペットさんが目指していく姿を教えてください。

 佐藤 : 今後私たちは大きな局面を迎えます。というのも、2019年から2025年にかけて、現在4つあるトヨタブランドの国内販売チャネルで全車種併売になります。これまでは「クラウン」や「ハリアー」などチャネルごとに少しずつ取扱車種が異なったのですが、それが廃止されます。そうすると、どのトヨタのお店に行っても全く同じ車が売っているわけですから、各ディーラー値引き合戦になる恐れがあります。

――市場が大きく変わっていきますね。

佐藤 : だからこそ、そのような値引き合戦とは一線を画し、地元・福島のために意味のある事業運営をしていきたいと思っています。そのためにも、社員満足を高め、品質の高いサービスで地域貢献をしていきたいと思っています。目指す姿やカルチャーだけでなく、実態の業績をきちんと連動させていけるか、ここからが大きな勝負です。

福島トヨペット株式会社 組織開発担当 取締役 佐藤藍子さん(写真右)/株式会社ヒューマンバリュー 代表取締役副社長 阿諏訪博一さん(写真左)

(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:古林洋平)

 

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