組織戦略に欠かせない要素として、人材マネジメントがあります。では、人材マネジメントとは具体的に何を指すのでしょうか。今回は人材マネジメントの定義や構成する要素ついて解説するとともに、最新のHR Techの動向についてもご紹介します。
人材マネジメント6つの構成要素とは?
人材マネジメントとは、企業のミッション・ビジョンや戦略を達成するための人材活用の仕組みを指します。人材マネジメントを構成する要素としては、採用、育成、配置・異動、評価、報酬、福利厚生があります。
1.採用
人材の確保をする前に、自社の経営戦略を見つめなおし、自社が求めている人材を明確にすることが大切です。新卒採用と中途採用に分け、それぞれにあった採用戦略を立てることが重要です。
2.育成
社員がどのように成長していくことが理想なのかを考えたうえで、社員のスキルアップのための育成計画を推し進めます。必要に応じ、社内外の研修会、セミナー、資格取得にかかる費用の補助などを通して、社員のスキルアップを助けます。
3.配置・異動
個々の能力や適性に合わせた人員配置を行うには、業務の把握と社員の能力や適性を把握することが重要です。
4.評価
社員のモチベーションを維持するためには、評価基準を明確化しておくことが大切です。昇進や昇給の要件も明確になっているのかチェックしておくと安心です。
5.報酬
評価と共に、報酬も社員のモチベーションの維持に深く関与します。働き方や能力に応じて正しい額の報酬が支払われるように、評価との整合性についてはもちろん、制度自体の定期的な見直しが必要になります。
6.福利厚生
福利厚生が充実しているかどうかというポイントは、働く環境を選ぶうえで重要なポイントとなります。最近では退職金や社宅・寮を備えている会社も少なくなってきました。そのため、そのような福利厚生が充実していることで、他社との差別化を図ることができます。
あらためて注目されている背景は?
これまでも「ヒト・モノ・カネ」という経営資源の3要素として、人材マネジメントの重要性は理解されていました。しかしこれまでモノ・カネとは違って、新卒一括採用で企業が従業員を選び、終身雇用によって長期的に人材を確保することは、それほど難しくありませんでした。
しかし近年の日本では、少子高齢化の進行が進み労働人口の減少が大きな問題となっています。また終身雇用も崩れたことで、個人にとっては、長期的に就業することで得られていた「安定」というメリットが無くなってしまいました。さらに転職に対する心理的ハードルも下がっていることで「人材が集まらず、流出しやすい」状態に陥っています。
さらに、市場や世の中の環境が、VUCA(ブーカ)の時代と呼ばれる時代に突入したことで、より価値のあるサービスを、早く、多く生み出す力が求められるようになりました。そのために優秀な人材に活躍してもらうための仕組み作りが求められています。
※VUCA(ブーカ)…Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、omplexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の頭文字をとった混沌とした世の中を表す言葉
人材マネジメントに活用される「HR Tech」とは?
「HR Tech」とは「Human Resource」と「Technology」を組み合わせた言葉で、採用、育成、配置・異動、評価などの人材マネジメントの要素において、クラウドサービスやビックデータ解析、人工知能など、最新テクノロジーの活用やそのシステム・ツールを指します。
近年では米国を中心にHR Techの活用が広がりを見せており、2010年頃からHR Techの関連事業を展開するスタートアップ企業への投資が活発に行われています。また、2016年にシカゴで開催されたHR Techの見本市では400社以上の展示ブースが並び、約8500名の参加者が集まるなど、HR Techに対する注目は年々高まりをみせています。
HR Techのメリット・デメリット
技術革新とともに盛り上がりを見せているHR Techですが、利用するメリットとデメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
メリット
HR Techを利用して得られるメリットの1つ目は、該当業務の効率化を図れることです。煩雑な業務を効率化することで、その時間を生かしてより戦略的な施策に注力することができます。
メリットの2つ目は、勤怠管理や評価をはじめとした、人材の幅広いデータを保存・一元管理することができることです。従来の表計算ソフトなどで管理しているケースでは、データが散らばったり、データ自体が壊れてしまったりと様々な不具合が出て余計な工数を使ってしまうケースもあります。システムやツールで管理することでほとんどの場合、リアルタイムのデータが確認が実現できます。
デメリット
HR Techを利用するうえでのデメリットは、システム導入についてのコストや工数がかかるという点です。ただし従来であれば、自社サーバーにインストールし、システムを利用するオンプレミス型が主流でしたが、最近では比較的安価に導入できるSaaS型のサービスがあるため、検討の上、費用対効果や利用目的をしぼって導入をすすめましょう。
また、どのシステムでも言えることではありますが、導入したものの社員に利用されず、システムが形骸化してしまうケースも多くあります。そのため、導入前に目的はもちろん、利用促進の施策や活用イメージをつけ、運用中もプロジェクトオーナーを決めるなどして積極的に利用促進していくことをおすすめします。
まとめ
近年の日本では、少子高齢化の進行が進み労働人口の減少が大きな問題となっています。終身雇用が崩れたことや、転職に対する心理的ハードルも下がっていることで「人材が集まらず、流出しやすい」状態に陥っています。
そのため、人材マネジメント(採用、育成、配置・異動、評価、報酬、福利厚生)を仕組み化して、優秀な人材を確保していく必要があります。
最近ではHR Techの活用が広がりをみせており、上手く活用できれば大幅な工数削減や、新たな施策にチャレンジすることができます。目的と利用促進のイメージをつけて、PDCAを回していくことが、HR Tech活用の鍵になるでしょう。