「ノルマなし、オフィスなし、管理職なし!」という斬新な経営で、自由な働き方を実現しつつ成果をあげている株式会社ソニックガーデン。
「そんな自由な方法でちゃんと成果が出るだろうか?」と疑いたくなる内容ばかりですが、代表取締役社長の倉貫さんは、「管理をしなくても成果が出るのが究極のマネジメント」と語ります。
そこで、これまでソニックガーデンさんが実際に取り組んできた内容を元に執筆された『管理ゼロで成果はあがる』の内容にそって、明日からできる取り組みとワンポイントアドバイスについてご紹介いただきました。
株式会社ソニックガーデン創業者・代表取締役社長

1974年生まれ。京都府出身。大手SIerにてプログラマーやマネジャーとして経験を積んだのち、2011年に自ら立ち上げた社内ベンチャーのマネジメント・バイ・アウトを行い、ソニックガーデンを設立。
「納品のない受託開発」という斬新なビジネスモデルは、船井財団「グレートカンパニーアワード」でユニークビジネスモデル賞を受賞。2018年には「働きがいのある会社ランキング」に初参加5位入賞と「第三回ホワイト企業アワード」イクボス部門賞受賞。著書に『管理ゼロで成果はあがる』など多数。
自分たちなりのスタイルで成果を出せる働き方とは
私たちソニックガーデンは、「納品のない受託開発」というビジネスモデルで、ノルマもなければ、オフィスもない、管理職もない世間一般の企業とは全く違った経営スタイルです。
お陰様で、設立から8年たち増収を続けている中で、「納品のない受託開発」というビジネスモデルは、船井財団「グレートカンパニーアワード」でユニークビジネスモデル賞をいただきました。
また、2018年には「働きがいのある会社ランキング」に初参加5位入賞、「第三回ホワイト企業アワード」イクボス部門賞受賞など、世間からも注目いただけるようになりました。
これまで私たちがやってきたことは、やはり間違いではなかったんだと思えると同時に、多くの人が自分たちなりのスタイルで働き、幸せになるために、何かお伝えできることがあるのではないか、との思いから『管理ゼロで成果はあがる』を執筆させていただきました。
では、ソニックガーデンがここに至るまでに行ってきたことの、最初のステップは何だったかと考える「生産性を上げる」ことでした。そうして生産的なチームができたら、次は個々の自律性を上げていき、最終的に独創的な働き方ができるようになりました。
会社や個人が理想とする働き方は会社や人の数だけあるので、必ずしも同じやり方である必要はありませんが、「生産性を上げ、自律的に働く」ことはどのビジネスパーソンも目指すべきところではないでしょうか。
まずはそのヒントをお伝えできればと思い、著書の中から具体的、かつ取り組みやすい方法を中心に、全3回にわたってお伝えしたいと思います。
そもそも「生産性」について、どれだけ考えられているか?
働き方を変えようとか、生産性を上げようといったときに、とかく日本人は真面目なので、何かを足そうとしたり、たくさん頑張ろうとしますね。
だけど今大切なのは、少し立ち止まって、「ただ頑張る」以外の方法で成果を出しましょう。というのが私の伝えたいことです。少ない労力で最大の成果が出せることがつまり、生産性があがる、ということです。
そのためのポイントは、足し算ではなく、引き算へ方向転換することです。「要らないものはなくし、やらなくてもいいことはやらない」と決めて生産性の低い仕事をそぎ落とす必要があります。
「コストパフォーマンス」という言葉がありますが、コスパのいい働き方をしたいなら、コストをかけてパフォーマンスを出すのではなく、コストを減らしてパフォーマンス出す、と決める必要があります。
では具体的な方法を見ていきましょう!
やり方を見直す ~「ふりかえり」で抜本的に生産性を改善する~
私たちは、仕事のやり方を見直す時間を「ふりかえり」と呼んで日常的に行っています。文字通り、仕事をふりかえり、活動を見直し、改善のアクションを考える時間です。
ここでは、業務そのものではなく、業務の進め方ややり方をふりかえります。生産性が低いままいくら労力を追加しても、限界があります。また、それらをカバーするための残業は、一時的な対処療法ではありますが、抜本的な解決策ではありません。
ふりかえりとは、そもそもの仕事の進め方や、目的思考で考えることで、仕事を進めるベースの武器を磨く活動です。必要のない業務を洗い出し、生産的で効果的な仕事をするために、ぜひチームで取り組んでみましょう。
●ふりかえり4つのポイント
① KTPでふりかえりをする
ふりかえりを円滑に行うために、「KPT」というフレームワークを使います。ふりかえりに必要なのは、ホワイトボード1枚だけです。ホワイトボードを3つの領域に分けて「Keep=よかったこと」「Problem=悪かったこと」「Try=次に試すこと」を書き出していきます。
② とにかく全員で出し切ることを優先する
最初は、(K)よかったことと(P)悪かったことを洗い出します。起きた事象だけでなく、その事象にいたった経緯についても共有するといいでしょう。
1つ1つ議論しているとキリがないため、ここではとにかく全員で出しきることを優先します。それぞれが個々で気がついたことや、抱えていた悩み、困っていることを中心に出していって構いません。
(K)よかったことと(P)悪かったことを出し尽くしたら、全員で共有し、(T)次に試すことを議論します。ここからはチーム全体で取り組みます。
③ 精神論ではなく、具体的なアクションに落とし込む
精神論で「~をがんばる」などとしてしまうと、次にふりかえりで、そのアクションが良かったのか悪かったのか、実行に移せたのか、移せなかったのか確認が難しくなります。そのため、あとから検証できる具体的なアクションに落としこむことが重要です。
④ 週に一度、1時間のふりかえりから始める
ふりかえりの機会は、頻度が短いほど早く方向修正でき、修正の量も少なくすむため、週に一度、1時間から取り組むところから始めるといいでしょう。ふりかえりの習慣がついてくると、わざわざ機会を設けなくても日々の仕事の中で、自然とできるようになってきます。
●ふりかえりの効果:継続することでチームに改善の意識が定着する
ふりかえりを続けていく大きな効果は、「自分たちの現場は自分たちで改善していくのだ」という意識がチームに根付くことです。改善の意識が定着すれば、マネジャーや上司が指導しなくても自分たちで改善を重ねていくことができるようになります。
生産性を見直す ~「時間帯効果」の高い仕事をする~
私たちが生産性を意識するときに気にしているのは、時間あたりに対してどれだけ高いパフォーマンスが出せるか、つまり「時間対効果」を高くすることです。例えば私たちの会社では、残業や夜なべをして成果を出そうものなら、むしろ怒られてしまいます。
はたして、「一生懸命に仕事をする」というのはどういうことでしょうか。時間さえかければ価値の高い仕事が出来るとは言い切れませんね。クリエイティブな仕事やチームワークが大切な仕事であればなおさらでしょう。
私たちは、「限られた時間の中で要領よく仕事を進めることを“頑張る”」ことを推奨しています。そのためのポイントをいくつかご紹介します。
●気合いや根性でかんばらない
先述の「ふりかえり」をしてみると、(T)次に試すことに「がんばる」「気をつける」といった精神論が出てくることがあります。しかし、そもそも人は弱いので、精神論だけで改善することは難いのです。
それよりは、その時の実力として真摯に受け入れ、次に繋がるアクションを明確にするほうがよっぽど建設的、かつ持続的です。その際のポイントとしては、楽にできるように仕組み化や自動化ができないか、と考えることです。
「自分がやっている仕事を減らしても変わらない成果を出せるようにするにはどうすればいいか?」を考えることが重要です。
●「そもそも」からゴールを再設定して楽をする
「時間対効果」を最大にする秘訣の1つは、ゴールの再設定です。私たちのチームでは「そもそも」という言葉をよく使います。
何か仕事をしなければいけないとき、何か頼まれたとき、「そもそも」なんのためにやるのかを考えるのです。その仕事をする目的まで遡ることで、まったく別のアプローチも浮かんできます。
苦労が美徳とされがちですが、楽をするためのアイデアをしっかり考えたほうがみんな幸せだと思いませんか。
●「やったほうがいい」ことはしない
「やるか、やらないか」でいえば、やったほうがいいことは世の中にたくさんあります。では、本当にやらなければいけないことかといえば、やらなくてもいいことのほうが多いのが現実です。
私たちの会社では次のようなこともやめてしまいましたが、全く問題なく会社を運営できています。
・議事録の誤字脱字チェック
・社内の会議にむけた資料作り
・全体会議での進捗共有
・有給や経費を取得するための事前の決裁
・目標管理とそのための面談
いきなり、会社の制度を変えるのは難しくても、会議体の設定やそこでの準備物などであれば、いちメンバーからでも改善提案ができるのではないでしょうか。そうしたことの積み重ねによって、チーム全体の生産性に対する意識が醸成されていくと思います。
●100%の品質と完成度は目指さない
「80%の完成度には2割の時間でよくて、残り20%を高めるために8割の時間がかかる」というパレートの法則があります。ならば、いっそ80%で終えてみてはいかがでしょうか?もし、80%で確認して満足いったなら、圧倒的な「時間帯効果」を出したことになります。
そうしたスタンスを「巧遅よりも拙速」と言っています。Facebookの創始者であるマーク・ザッカーバーグも「完璧を目指すよりまず終わらせろ(Done is better than perfect)」と言っています。
そもそも、現実社会に100%などないので、それ自体が不可能であり、自己満足にすぎないのではないでしょうか。
●お金で解決できることにはお金を使う
お金を惜しんで「何でも自分たちでやってしまおう」と考えてしまうこともありますが、餅は餅屋です。結局は採捕からプロフェッショナルに頼んだほうが安くつくことも多いのです。
社外のプロフェッショナルに依頼するのか、自分たちで苦労しても取り組むのかの判断基準は、「ノウハウを蓄積したいかどうか」です。その取組みを自分たちの強みにしたいのであれば、自分たちで取り組むべきでしょう。
●抱え込まずにさっさと相談しよう
よく聞くケースとして、中途入社した人の最初の壁は「相談しにくい」ということです。プライドもあるでしょうし、忙しそうなメンバーの時間をとることに気がひけるというのもわかります。
しかし、そこはさっさと相談したほうがチーム全体の生産性は高まりますので、「時間対効果」は長期的な視点で考えるようにしましょう。瞬間的な効果は下がっても、そのような意識があれば、相談にのるほうもマイナスには感じないはずです。
今の時代にあった“頑張り方”をして、幸せにつながる働き方をしよう
今回は、自分たちらしく自由に働くための最初のステップである「生産性」についてお伝えしました。
「生産性」というキーワードを考えたとき、過去、戦後の復興から日本が急激に成長してきた背景には必ずなにかしらの「頑張り」があったと思います。しかし、時代が変わり、これまでと同じ頑張り方では思うように成果が出なくなってきました。
それは「頑張っていない」のではなく、単にビジネスの形や経済が変わってきたからですが、未だに、「成果が上がらない、経済が成長しないのは、頑張っていないからじゃないか」という発想から抜けられないでいるのが、日本の現状なのではないかと思います。
そういった固定的な発想からいち早く抜け出し、人生100年の時代の働き方や、社員の幸せにつながる働き方を考えるきっかけになればと思います。
次回は、ネクストステップである「自律的に働く」ことについてお伝えしたいと思います。「自律的に働く」とは、自分で自分のことをマネジメントでき、自分で選択ができるということです。自律性を持つことで、働く環境や楽しさも自分自身でつくることができ、より自由な働き方に近づいていきます。
次回記事はこちら。
「管理ゼロで成果はあがる」に学ぶ!第二回『自律的に働く~人を支配しているものをなくす~』
(構成・取材・文:大島亜衣里、撮影:古林洋平)
管理ゼロで成果はあがる~「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう 倉貫 義人 (著)
人生の100%を楽しめる組織を作る“究極のマネジメント”とは
「上司なし・決裁なし」「経費は承認なく使える」「休暇は取り放題」「給与は一律、賞与は山分け、評価制度なし」「売上目標やノルマはなし」「働く時間も場所も縛りなし」「副業OK」
最高に自由に働いて成果を出し続ける会社の実体験に基づくメソッドや考え方を「生産的に働く」「自律的に働く」「独創的に働く」の3つのステップに体系化。「組織として成果を出すこと」「個人か゛楽しく働くこと」 をだれでも両立させる方法がわかる!
新しいパフォーマンスマネジメントのためのツールを紹介
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