無料トライアルはこちら

FREE TRIAL 30日間 無料体験

全機能をご利用いただけます!

まずは資料請求
  • HOME
  • 失敗の原因は人事主導にあり?~日本企業におけるパフォーマンスマネジメント導入の勘所~(前編)

失敗の原因は人事主導にあり?~日本企業におけるパフォーマンスマネジメント導入の勘所~(前編)

投稿日:

ビジネス環境が目まぐるしく変化する中で、人事に求められる役割や目指すべき方向性が変わりつつあります。今回は最近の潮流である「パフォーマンスマネジメント」の概念に基づき、さまざまな変革をリードしてきた人事のプロフェッショナル、志水静香さんにお話を伺いました。聞き手は、組織行動とリーダーシップを専門とし、大学で客員教授も務めている須東朋広さんです。

【写真左】志水 静香氏 ランスタッド株式会社 取締役最高人材活用責任者(Chief People Officer)

前職は元ギャップジャパン株式会社人事部シニアディレクター。大学卒業後、日系IT企業に入社後、外資系IT・自動車メーカーなどを経てギャップジャパンに転職。採用、研修、報酬などの人事制度基盤を確立。
2013年、法政大学大学院政策創造研究科修士課程修了。ウルリッチ「人事コンピテンシー」、ウェインベーカー「ソーシャルキャピタル」などのビジネス書を翻訳。
昨年、「キャリアマネジメントの未来図:ダイバシティとインクルージョンの視点からの展望」にて第4章執筆。組織の枠を超えて積んだ経験が個人の能力を引き出すと考え、「越境学習」「組織を超えたら人材異動」を研究。

現在、大学やNPO、さまざまな機関で組織開発・人材育成のアドバイザーとして活動中。

【写真右】一般社団法人組織内サイレントマイノリティ 代表理事、多摩大学大学院 経営情報学研究科 客員教授 須東 朋広氏

2003年、最高人事責任者の在り方を研究する日本CHO協会の立ち上げに従事し、事務局長として8年半務める。
2011年7月からはインテリジェンスHITO総合研究所(現・パーソル総合研究所)リサーチ部主席研究員として日本的雇用システムの在り方の研究から中高年、女性躍進、障がい者雇用、転職者、正社員の雇用やキャリアについて調査研究活動を行う。

2016年10月、組織内でなんらかの理由で声を上げられない社員が増え、マジョリティ化しつつある中で、働く人全てがイキイキ働き続けるために『一般社団法人組織内サイレントマイノリティ』を立ち上げる。

 


VUCAの時代に変化させるべきものと守るべきもの

須東 : 志水さん、本日はよろしくお願いします。早速ですが、GE、マイクロソフト、アクセンチュアといったグローバル企業がレイティングを廃止するといった新しいパフォーマンスマネジメントが注目を集めていますよね。

志水さんが前職で実施されたノーレイティング(※1)の導入もまさしくその潮流のひとつだと思うのですがなぜ導入されたのか、その当時の背景や目的について教えてください。

(※1)ノーレイティング…A評価、B評価などの社員のランク付け(レイティング)を行う年次評価制度を廃止すること。

志水 : ビジネスを取り巻く環境がVUCA(※2)と呼ばれるような時代であり、見えざる敵の参入などが激しい時代になりました。年に1回、2回評価や面談をしてパフォーマンスマネジメントをするというのは、ビジネスの変化にそぐわない状況になっています。期首にビジネスゴールを定めたとしても、期の途中に目標を見直さなければならないケースが増えてきました。

(※2)VUCA…Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の頭文字をとった言葉で、混沌とした現代社会を表している。

須東 : それほどビジネスのスピードが速くなっているのですね。

志水 : また従来のパフォーマンス・マネジメントプロセスはかなり複雑で、時間と費用がかかります。掛けるコストとビジネスパフォーマンスが見合っていないこと、そしてリーダー及び社員に好まれないプロセスであることから、前職では年度末の面談廃止とノーレイティングを導入しました。

須東 : なるほど。

志水 : それに加えてその当時、現状に満足している社員が多く、チャレンジもせず危機感なく淡々と仕事をこなす姿が見受けられました。その姿は、目指していた企業理念と相反するところがありました。

須東 : 企業理念ですか?

志水 : はい、企業理念で目指していたのは、創造力を発揮して、果敢にチャレンジする起業家精神を持ち続けてもらうことでしたが、過去に積み重ねてきた強烈な成功体験からか、いつしか保守的な考え方が組織中に蔓延してきていました。あらためてその企業理念を復活させるためには、社員のマインドセット(※3)を変えることが必要だと思い、社員の行動の軸となる人事評価を変えることで企業理念の実現を目指しました。

 (※3)マインドセット…これまでの経験や教育、先入観から作られる思考パターン、固定化された考え方のこと。スタンフォード大学心理学教授、キャロル・S・ドゥエック博士により提唱された。

須東 : ノーレイティング導入の目的は、ビジネス環境の変化に柔軟に対応するということと、企業理念を体現するために社員のマインドセットを変えるという2つの目的があったのですね。

志水 : おっしゃる通りです。ビジネスの変化に合わせて柔軟に対応することはもちろんですが、企業理念は会社の原点ですから。理念を体現しなければという思いがありました。

 

制度が形骸化してしまう理由は、「人事が主導するから」?!

須東 : 最近では新しい形のパフォーマンスマネジメントに大きな注目が集まり、ノーレイティングをはじめとする人事制度の見直しや制度改革を行う企業も出てきました。しかし実際には制度が形骸化してしまう企業も少なくありません。制度を根付かせるための勘所は何でしょうか?

志水 : 制度を根付かせるための工夫は二つあります。一つ目はその目的に沿って全体で考えることです。ノーレイティングでいうと、廃止する、これ一つで完結するわけではないんですよね。もともとビジネス環境の変化に合わせた柔軟な対応ができるようにしたいという目的がありましたから、レイティングとそのために行っていた四半期に一度の面談を廃止する代わりに、上司と社員の短期スパンでの定期的な対話の機会を設けました。

レイティングを目的としないフィードバックとコミュニケーションの機会ですね。これを通じて、その都度方向性を確認したり、社員一人ひとりに向き合って成長を促すことができるようになりました。「ノーレイティング」と「定期的な質の高い対話」、この二つで一つの施策と言えますね。

須東 : 目的に沿って何が必要で、何が不要なのか、見極めることが大切なのですね。

志水 : 工夫の二つ目は、それらを日常的に根づかせるために社内のミドル層が自ら動いてくれるような仕掛けを用意することです。

須東 : ミドル層への仕掛けですか。

志水 : 個人的には会社を引っ張っていく上で重要な役割を果たすのは、トップと一般社員をつなぐミドル層だと考えています。ですから、彼らが腹落ちするようにワークショップを積極的に行い、ビジネスにどれだけ効果があるのかを伝えました。まずは企業の経営理念や経営ビジョン(Why)を発信し、次に達成すべきこと(What)と戦術(How)を正確に伝えます。また同時に、役割と責任を持たせて「仕組み化」していきました。

須東 : 仕組み化というのは、具体的にどのような仕掛けなんですか?

志水 : その時々の施策の目的やテーマに沿って、ミドル層の人たち自身が日ごろ感じている課題を挙げてもらいます。そしてその課題ごとにプロジェクト化してチームを作ります。ただ、チームに入るかは立候補制なのであくまで手上げです。

こうすると当事者意識と意志を持った人が集まりますから、ポジティブなエネルギーが生まれ、物事が動きます。ポイントはあくまで自分の意志でやってもらい、信頼して任せること。人事があれもこれもやってしまってはダメなんです。

須東 : 人事主導ではなく、ミドル主導にすることで仕組み化できるんですね。野中郁次郎先生の知識創造産業にある「ミドルアップダウン経営」と同じ考え方ですね。

志水 : そうなんです。こういった仕掛けを用意し場を創るのが人事の役割かなと思っています。ミドル層自らが動いていくと、その配下にいるメンバーフォロアーとしてどんどん広がっていくというのをこれまで何度も体験しました。

【インタビュー後編はこちら】:社員が主体的に動きはじめる「グロースマインドセット」の力~日本企業におけるパフォーマンスマネジメント導入の勘所~(後編)

 


新しいパフォーマンスマネジメントのためのツールを紹介

ヒトリンクパフォーマンス

【サービス詳細はこちら】:HITO-Linkパフォーマンスについて詳しく見る

「HITO-Linkパフォーマンス」はOKR進捗管理のほか、人材データベース、目標評価シートなど、さまざまな機能が搭載されたパフォーマンスマネジメントシステムです。
OKRや1on1ミーティングに活用できる機能を30日間の無料トライアルでお試しいただけます。ぜひ詳細をご覧ください!

Facebookページに「いいね!」を押すと、
組織づくりベースの最新コンテンツが受け取れます!