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GEが9ブロックを廃止した理由。新たな人事評価制度「PD」の導入によって生まれ始めた変化とは。

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GEジャパン株式会社 GEジャパン 執行役員 人事本部長 兼 GEヘルスケアアジアパシフィック人事本部長 宇佐見 英司氏(写真右)/一般社団法人組織内サイレントマイノリティ 代表理事、多摩大学大学院 経営情報学研究科 客員教授 須東 朋広氏(写真左)

HRに関わるビジネスパーソンにとって、GEの人事評価モデル「9ブロック」はあまりにも有名といえるでしょう。事実、多くの日本企業も9ブロックをモデルにした人事評価を導入してきました。しかし、GEは2016年に9ブロックを廃止。レイティング(格付け)による評価を止め、「PD(パフォーマンス・デベロップメント)」と呼ばれる新しい人事制度を導入し、パフォーマンスマネジメントにシフトしました。さらには、「ピープルリーダー」という新しいリーダーシップ像を打ち出し始めています。

なぜGEは、人事評価制度を抜本的に改革したのか。そして、PDを用いた先進的な人事評価制度によって、どのような変化が生まれ始めているのか?――そこで、GEジャパン 執行役員 人事本部長 兼 GEヘルスケアアジアパシフィック 人事本部長 宇佐見英司さんにお話を伺いました。聞き手は、組織行動とリーダーシップを専門とし、大学で客員教授も務めている須東朋広さんです。

GEジャパン株式会社 GEジャパン 執行役員 人事本部長 兼 GEヘルスケアアジアパシフィック人事本部長 宇佐見 英司氏(写真右)/一般社団法人組織内サイレントマイノリティ 代表理事、多摩大学大学院 経営情報学研究科 客員教授 須東 朋広氏(写真左)

GEジャパン株式会社 執行役員 人事本部長 兼 GEヘルスケアアジアパシフィック人事本部長 宇佐見 英司氏(写真右)
富士通株式会社で国際人事業務全般を担当した後、1998年カリフォルニア州シリコンバレーへ出向。富士通が買収したアムダール社で、報酬制度を中心とした人事業務を担当する。
通算10 年間の米国勤務を通じ、元米上場企業での処遇評価制度設計・連続M&Aによる事業拡大等に携わる。2010 年よりGE グループに移籍。GEヘルスケア・ジャパン株式会社の人事制度改革などに関わった後、現職に至る。

一般社団法人組織内サイレントマイノリティ 代表理事、多摩大学大学院 経営情報学研究科 客員教授 須東 朋広氏(写真左)
2003年、最高人事責任者の在り方を研究する日本CHO協会の立ち上げに従事し、事務局長として8年半務める。
2011年7月からはインテリジェンスHITO総合研究所(現・パーソル総合研究所)リサーチ部主席研究員として日本的雇用システムの在り方の研究から中高年、女性躍進、障がい者雇用、転職者、正社員の雇用やキャリアについて調査研究活動を行う。

2016年10月、組織内でなんらかの理由で声を上げられない社員が増え、マジョリティ化しつつある中で、働く人全てがイキイキ働き続けるために『一般社団法人組織内サイレントマイノリティ』を立ち上げる。


事業ポートフォリオの変化に合わせたカルチャー改革の実行

須東 : GEは9ブロックに代表される人事評価モデルを生み出し、世界的に注目を集めてきました。しかし、2016年に9ブロックを廃止し、社員の能力とモチベーションを引き出すパフォーマンスマネジメントへのシフトを推進しています。まずは、その理由や背景についてお聞かせください。

宇佐見 : まず、人事評価制度の変革についてですが、これは必然だったと考えています。変革の起点は、GEの事業構造の大きな変化です。昨年、ジェフ・イメルトが会長兼CEOを退任し、その座をジョン・フラナリーに譲りました。GEのトップが交代するのは16年ぶりのことです。ジェフ・イメルトがトップを務めた時代には、9・11や世界金融危機が起きました。混沌とした市場環境の中で、GEは既存の事業ポートフォリオを見直し、ビジネスの「選択と集中」が進められていったのです。この数年、GEはデジタルインダストリーカンパニーを標榜しており、事業構成を大きく変化させました。それに伴い、GEのカルチャー(文化)を変革させる必要がありました。――人事評価の変化には、そういった背景がありました。

GEジャパン株式会社 GEジャパン 執行役員 人事本部長 兼 GEヘルスケアアジアパシフィック人事本部長 宇佐見 英司氏

須東 : なるほど。カルチャーの変革というのは、具体的にどのようなものなのでしょうか。

宇佐見 : カルチャーの変革には3つのポイントがあります。まず1つ目のポイントは、我々の働き方を変えるため、ファストワークという取り組みを数年前に始めました。これは、エリック・リース氏の「リーンスタートアップ」の考えに基づくものと言えます。とにかく素早くにプロトタイプを作り、お客様の声を聞きながら製品・サービスを磨いていくという仕事の進め方です。しかし、GEには「失敗を許さない」、エラーを限りなくゼロに近づけるというシックス・シグマの考え方が長らく浸透していたため、このマインドセットの変革は容易ではありませんでした。そのジレンマを乗り越え、「失敗を恐れないでやっていこう」というのがファストワークです。

須東 : では2つ目、3つ目のポイントは?

宇佐見 : ファストワークの次に取り組んだ2つ目のポイントが、社員の新しい行動規範づくりです。従来の行動指針「GEバリュー(グロースバリュー)」から、“お客様に選ばれる存在であり続ける”、“より速く、だからシンプルに”など5つからなる行動指針「GE Beliefs」に変更しました。これにより、大きな転換期を迎えているGEの社員30万人の向かうべきベクトルを再定義したのです。そして3つ目のポイントとして、「GE Beliefs」に基づいて行動を促進させるために人事評価制度を変革しました。

須東 : 人事評価制度の変更点として、9ブロックを廃止し、ノーレイティング(年次評価の廃止)やタッチポイント(1対1の面談の場)を取り入れています。なぜこのような変更にしたのでしょうか?

宇佐見 : 最初に「評価は何のためにやるのだろう?」という議論からスタートしました。そしてGEがたどり着いた答えは、「評価は社員の能力開発を促すためにやるものだ」というものだったのです。つまり、「昨日よりも今日の方が成長している」と社員たちが実感できるようにするということです。そのためには、ピープル・リーダー(マネージャー)とチームメンバー(部下)が期初に目標を設定して、期末に評価・フィードバックするようでは遅いのです。いい仕事をしたときにその場で評価をした方が、社員は成長を感じられます。

須東 : 社員を伸ばすために、タイムリーなフィードバックを行う人事評価制度にしたわけですね。

宇佐見 : はい。そこでGEが取り入れたのが、「PD(パフォーマンス・デベロップメント)」という人事評価制度であり、ツールです。この制度・ツールを日常的に使って、良い仕事を評価し、失敗したときもその場でフィードバックできるようにしました。レイティングというのは、どうしても人との比較になってしまいます。そうではなく、社員がもっと自ら成長することを後押しするためにノーレイティングやタッチポイントを導入したのです。有名な曲の歌詞ではないですが「ナンバーワンを目指すのではなく、オンリーワンを目指そう」――そういった考え方なんですね(笑)。

一般社団法人組織内サイレントマイノリティ 代表理事、多摩大学大学院 経営情報学研究科 客員教授 須東 朋広氏

社員が失敗に対して前向きな姿勢を持つようになった

須東 : 実際にPDというツールは、GE社内でどのような使われ方をしているのでしょうか?

宇佐見 : PDは社内開発した上司・部下間、および社員同士のフィードバックやコミュニケーションのためのアプリケーションで、PC・モバイルどちらからでも使うことができます。良い仕事をしたメンバーには「good job」のような気軽なメッセージやテキストを送ることができるため、リアルタイムに近い形でフィードバックすることが可能です。また、一部では金銭的価値をつけてメッセージを送るといった機能を実装しています。

須東 : PDを取り入れるなど、パフォーマンスマネジメントにシフトしてから、どのような変化が見えますか?

宇佐見 : 明確に変化したと言えるのは、社員が失敗に対して前向きな姿勢になってきているということです。GEの創業者であるトーマス・エジソンは「私は失敗したことがない。ただ1万通りのうまく行かない方法を見つけただけだ」と語ったと言われていますが、まさにその発想です。お客様の期待に応えられないから評価が低いのではなく、そこで何を学び、どう成果を取り返していこうと思っているのか。そこに目が向くようになりましたね。

須東 : なるほど。

宇佐見 : また、社員の過去や功績などのレイティングに頼るということができなくなったので、社員自身の本質が問われるようになってきている点も大きな変化ですね。過去に、ある事業で成果を出したとしても、違うフィールドに異動した際に、それと同じような成果を発揮できるとは限りません。チームを持つピープルリーダーたちは社員を今まで以上に真剣に見るようになりましたね。GEジャパン株式会社 GEジャパン 執行役員 人事本部長 兼 GEヘルスケアアジアパシフィック人事本部長 宇佐見 英司氏

ピープルリーダーが、イノベーションの着火剤になる

須東 : いま、宇佐見さんのお話の中から「ピープル・リーダー」というキーワードが出ました。GEでは人事評価制度の変革にあわせて、マネージャー層を、ピープル・リーダーと呼称していますよね。これは、「管理能力に優れたマネージャーではなく、チームをリードする存在が求められている」というメッセージだと思いますが、実際ピープルリーダーはどのように機能してきているのでしょうか。

宇佐見 : チームメンバー一人ひとりの志向を理解し、動機付けができるように、ピープル・リーダーたちをトレーニングしているところですね。これができるようになれば、将来のGEのイノベーションにつなげることができると思います。

須東 : ピープルリーダーはイノベーションを起こす「火付け役」になるということですね。

宇佐見 : GEでは、社員がイノベーションを起こすことができるようにピープル・リーダーを起点としたフィードバックを行っているのですが、その中でも意識的に行なっているのが「Continue」(継続)と「Consider」(再考)という2つのフィードバックです。

須東 : 良い仕事を手がけ、部下を賞賛するフィードバックが「Continue」で、改善するように促すフィードバックが「Consider」ということでしょうか。

宇佐見 : その通りです。「Continue」はプラスのコメントなので伝えやすいのですが、「Consider」を伝えるのは難しい。というのも、ただ問題点を指摘するのでは不十分ですし、響きません。成長を促進させる気づきにするために、相手のことを真剣に考える必要があります。

ちなみに、PD上でやり取りされる内容は、上司と部下のもので、実は人事も見ることができません。しかしながら、社員自身が主体的に刺さった「Continue」と「Consider」を共有するような文化が浸透しつつあります。これが社員同士の向上のために役立っていると実感していますね。また、チームタッチポイントというものもやっていて、個人だけではなくチームの「Continue」と「Consider」もディスカッションしています。

須東 : チームでのタッチポイントも実施しているんですね。

宇佐見 : 先ほどの話の繰り返しになりますが、チームにしろ、個人にしろ、意味のある「Continue」と「Consider」を送るためには、そのチーム・個人のことを深く知ろうとしなければなりません。動機付けのキッカケはどこにあるのか。どのような未来を描こうとしているのか。つまり、「モチベーションのレバーを理解しているか?」と言うことです。それを知らなければ、その人やチームに本当に刺さる「Continue」と「Consider」はあり得ません。

須東 : モチベーションのレバーというものはとても重要だと思いますね。それでは最後に、社員のモチベーションを知るために人事や現場で工夫されていることをお聞かせください。

宇佐見 : 密なコミュニケーションを取ることで、社員の動機付けを把握しようとしていますね。ピープル・リーダーとチームメンバーの1on1の面談の場であるタッチポイントはGEのほとんどの部門で行っています

私の場合は、2週間に一度、30分間のタッチポイントを実施しており、さらにはクオーターに1度、サマリータッチポイントを実施しています。オペレーティブなタッチポイントとは違って、どんなことにチャレンジしたいのか、そして私自身のフィードバックにも耳を傾けています。このようにタッチポイントはもちろん、PDを使ったタイムリーなフィードバックを繰り返すことが、社員たちが失敗に対して前向きな姿勢になっている源泉と言えますね。

PDを取り入れ、ノーレイティングにしたことで、GEは人事評価に寛容になったのか、と誤解されることがありますが、そうではありませんし、ノーレイティングとは評価をしないということでは決してありません。9ブロックを厳格に回し、高い緊張感とともにオペレーションを回していた状態を「北風」とすると、タイムリーなフィードバックを早く回し、社員一人一人の成長を最大化させるPDの取り組みはいわば、「太陽」のアプローチで、いずれも強い組織を作るための異なるアプローチと考えています。

(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:古林洋平)

 


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