- アルムナイ採用
2020 . 04 . 20
近年注目されている、アルムナイ採用。アルムナイ(alumni)とは英語で「卒業生」「同窓生」を表す単語で、企業の採用においては「離職・退職した人」「OB・0G」を指します。
以前は、退職・離職した人を再び採用することはあまり一般的ではありませんでしたが、なぜアルムナイ採用が注目されるようになったのでしょうか。そこには、人材確保における課題や企業の戦略などが関係しています。
今回は、アルムナイ採用が注目されている理由や、導入するメリット・デメリットなどについてまとめました。これからアルムナイ採用を行いたいと考えている、取り組んでいるものの、なかなかうまくいかないといった担当の方はぜひ、参考にしてください。
これまではあまり一般的ではなかったアルムナイ採用ですが、なぜ導入を検討する企業が増えているのか、注目されている理由についてみていきましょう。
終身雇用が当たり前ではなくなった昨今、人材の流動化が進んできました。以前よりも転職がしやすい環境になり、フリーランスやパラレルワークなど多様な働き方も増えてきています。
そのような流れの中で、企業は優秀な人材を確保することが難しくなりました。せっかく自社で教育をして人材が育っても、待遇に不満があったり、やりたいことができなかったりすれば、他の企業へ出ていってしまいます。新しく採用しようとしても競争が激しく、良い条件が提示できなければ採用には至りません。また、採用できたとしても、その人が自社にマッチしているとは限らないでしょう。
ここ数年は不況の影響もあって、よりその傾向が強くなってきています。2020年には新型コロナウイルスの問題も発生しており、さらに難しくなっていくことが予測されるでしょう。
そのような中で、もともと自社にいた経験のある人を再度採用できるシステムがあると、人材確保がしやすくなります。OBやOGであれば、自社の特徴や雰囲気もわかっていますし、十分な経験を積んできているので能力面でも安心して採用することが可能です。
アルムナイ採用が注目されているもうひとつの理由は、企業のブランディングになることです。
退職者が増えることは、自社のイメージダウンにつながります。退職者が多いということは、つまり待遇が悪い、働く環境が良くない、ブラック企業なのではないか…そういった憶測もされやすく、人材確保には悪い影響を与えてしまいます。
そこでアルムナイ採用を前提にした退職者とのつながりを持っていれば、イメージダウンを回避できる可能性があるのです。退職しても再雇用が可能ということを伝えていれば、家庭の事情などやむを得ない理由で退職しても、また戻って来られるという安心感につながります。他で経験を積んでまた戻ってきたい、というキャリアも叶うのであれば、働く人にとってはイメージダウンどころかプラスイメージになるかもしれません。
企業イメージを良くして採用しやすい状態をつくることができるという点が、アルムナイ採用が広がってきている理由です。
企業にとって良いことが多いようにみられるアルムナイ採用ですが、ほかにどのような特徴があるのでしょうか。アルムナイ採用のメリットやデメリットについて見ていきましょう。
アルムナイ採用のメリットは、優秀な社員を確保しやすいということです。もともと自社にいた人なら、企業の風土や事業の内容などについて把握していますし、それに必要な知識やスキルも持ち合わせています。
採用する側にとっても、どのような人材かすでにわかっているので、採用に際して検討しなければならない要素が少なくなります。また、アルムナイ採用を前提とした退職者とのつながりが確保できていれば、わざわざ求人広告などを出す必要もなくなり、どのタイミングでも採用することが可能です。
新たに採用した人だと、初期研修やOJTなど教育に時間をかけなければならず、戦力となるまでに時間がかかってしまいます。能力や適性なども採用してみて初めて見えてくる部分もあるため、ミスマッチが起きてしまうことも否定できません。
そういった点から、採用や教育に関するコストが削減できることや、自社にあった人材を確保しやすくなるということも、アルムナイ採用の大きなメリットといえるでしょう。
アルムナイ採用のデメリットは、既存社員との関係性や待遇の違いについて気を配らなければならないという点です。
ずっとその企業で働いている社員にとっては、退職した人は「一度、今の企業を離れてしまった人」であるため、マイナスなイメージを捉えられる可能性もあります。そのような人たちにとって、アルムナイ採用で戻ってきた人は、「ほかに魅力を感じる企業があれば、また離れていってしまうのでは」と思われているかもしれません。
このような雰囲気だと、せっかく再び採用しても、本人にとってはやりにくい環境になってしまいます。そうならないよう、両者がうまく関係を築けるような配慮が必要です。本格的に戻ってくる前に交流する時間を設けるなど、既存社員がアルムナイ採用で戻ってくる人を受け入れやすい環境を整えると良いでしょう。
人間関係だけではなく、待遇面においても不公平感が生じてしまう可能性があります。アルムナイ採用で雇用した人をあまりに高待遇にしてしまうと、ずっと働いてきた既存社員のモチベーションが下がってしまうかもしれません。かといって、あまり待遇が良くないと、アルムナイ採用をすること自体が難しくなってしまうことも考えられます。
既存社員が不満を抱かないよう、かつアルムナイ採用で元社員が戻ってきやすいよう、両者に配慮した待遇を検討する必要があります。
さまざまなメリットやデメリットがあるアルムナイ採用ですが、人材確保の点においては有用な手段となる可能性は大いにあります。では、うまく導入して成功させるためにはどうしたら良いのでしょうか。そのための具体的な方法について見ていきましょう。
アルムナイ採用を成功させるための重要なポイントは、まずはイグジットマネジメント(雇用に関する出口の管理)をきちんと行うことです。
退職者に再び戻ってきてもらうためには、自社に対して良いイメージを持ったままでいてもらう必要があります。円満に退職できなければ、そもそも以前いた企業に戻ろうという考えに至ることはないでしょう。
「また戻ってきたい」「機会があれば戻る選択肢も考えたい」、退職者にそう思ってもらうには、退職者を快く送り出せる仕組みづくりが必要です。具体的には、社員が起業や転職を希望したときにサポートできる制度を取り入れるなどです。
会社にいて欲しいのに、そのような制度は逆効果ではないかと思うかもしれません。たしかに終身雇用を目指すのであれば、悪手かもしれませんが現在はそうではありません。その人のキャリアを応援する、戻ってくることがあれば快く迎え入れるという企業の姿勢が、社員を安心させるだけでなく企業のイメージアップにもつながります。
実際に退職者を受け入れるためには、万全な体制を整えておくことも必要不可欠です。そこがきちんと整っていないと、既存社員との人間関係にトラブルが生じたり、うまく配属先に馴染めなかったりして、せっかく採用したのにうまくいかなくなってしまいます。
そうした状況を避けるために、実際に働き始める前に配属先と面談をしたり、コミュニケーションをとったりする機会を設けると良いでしょう。配属先ではどのような動きをしているのか、お互いにどのような人物なのかなどがわかれば、トラブルが起こりにくくなります。
フルタイム勤務が難しい場合のために、業務委託契約など正社員以外の雇用方法を選択肢として用意しておくことも必要です。プライベートにおける理由や、働き方などの問題で、正社員で働くのは難しいということもあります。それ以外の選択肢で働けるチャンスがあれば、採用のチャンスも広がるでしょう。
タイミンングが合えばいつでも採用できるように、退職者との関係を維持しておくことも重要です。企業の情報が定期的にわかれば、退職者にとって復帰するタイミングがつかみやすくなりますし、企業側もどのような経験を積んでいるのかがわかります。
メールマガジンやイベント、SNSなどのツールをうまく活用しながら、退職者との接点を持つようにしましょう。
採用するかどうかに関わらず、人材をリスト化しておくことも必要です。雇用を見据えたネットワークを構築しておくことで、採用できそうな人材の情報をプールしておけば、必要なときにアプローチしやすくなります。
そのためにも、退職者と円滑にコミュニケーションが取れるような仕組みづくりが重要です。そこで活躍するのが、CRM(Candidate Relationship Management)です。効率的にコミュニケーションをとり、関わりを持つことで、ミスマッチの少ない採用につながります。
HITO-Link CRM(ヒトリンク シーアールエム)なら、退職するタイミングで「またいつかご縁があったら」と自然に声をかけることができ、非常に良い関係で送り出せるようになります。
HITO-Link CRMでアルムナイ人材の情報を一括管理し、継続的なコミュニケーションをとることで、理解・共感度の高い人材を適切なタイミングで採用することができます。
人材確保の手段として注目されている、アルムナイ採用。成功させるためには、退職までの関わりや、実際に採用するまでのコミュニケーションが大切です。うまく導入できれば、優秀な人材が確保できるだけでなく、社員のモチベーションアップにもつながります。
今回ご紹介した情報もぜひ参考にしていただいて、退職者が戻りやすい制度づくりから始めてみてはいかがでしょうか。